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2022年度 若手会員研究奨励賞受賞者

 金山 英莉花

[所属]
  同志社大学 大学院心理学研究科 博士後期課程1年
[研究課題名]
  幼児期における「マルチモーダルな音程知覚」が「音程知覚と発声運動の統合」に及ぼす影響
研究概要(「研究計画書」より,一部略)
 幼児教育においては,歌唱などの音楽活動を通して幼児が楽しむことは重要とされているが,幼稚園教員や保育士は,音楽活動の援助をする際,子どもの個人差や能力の違いに難しさを感じている。歌唱をするためには模範となる歌声を聴き,その音程やリズムなどを知覚して発声運動と統合することが必要である。また,旋律の歌唱には空間認知能力が必要な能力の一つと考えられる。本研究の目的は,幼児の空間認知能力を考慮し,マルチモーダルな音程感覚が音程の知覚と発声運動の統合に及ぼす影響について実証的に検討することである。


1.応募状況

 2022年度若手会員研究奨励賞は,2022年11月30日を申込締切日(当日消印有効)として募集されました。期日までに所定の応募書類を提出した応募者は1名で,旧審査部門でいえば第2部門に該当する内容でした。

2.選考委員会

 応募者の提出した研究計画書と研究業績1点をPDF化し,審査を実施しました。選考委員会の構成は,委員長である田中堅一郎常任理事(学会活性・研究支援担当)の他,常任理事2名(田中真介氏・上瀬由美子氏),委員長指名による委員1名(松浦美晴氏:山陽学園大学総合人間学部)の合計4名でした。なお委員長(田中堅一郎)が指名した審査委員はあと1名おられましたが,審査の諾否と結果の回答ともに得られませんでした。

3.評価基準

 応募書類は以下の4つの観点について「5:優れている-3:基準を満たしている-1:不十分である」の5段階で評価されました(20点満点)。 (1) 研究課題の学術的重要性・妥当性(「研究目的」欄など)
・学術的に見て,将来の発展が期待できる推進すべき重要な研究課題であるか。
・研究構想や研究目的が具体的かつ明確に示されているか。
・日本応用心理学会が支援するに相応しい研究上の意義が認められるか。
(2) 研究計画・方法の妥当性(「研究計画・方法」欄など)
・研究目的を達成するため,研究計画は十分練られたものになっているか。
・研究倫理上の配慮が必要とされる研究では,適切な配慮がなされているか。
(3) 研究課題の独創性及び革新性(「研究目的」「研究計画・方法」「研究の独創性・意義」欄)
・研究対象,研究手法やもたらされる研究成果等について,独創性や革新性が認められるか。
(4) 研究遂行能力の適切性(添付業績など)
・これまでの研究業績等から見て,研究計画に対する高い遂行能力を有していると判断できるか。

4.選考経過

 選考委員会は,新型コロナウイルス感染の影響を配慮して,メール会議の形式で開催されました。まず,2022年12月10日より選考委員としての依頼を行い,承諾された後に応募者から提出された応募用紙を審査員に送信しました。
その結果,応募者の総合評点は(2)以外の観点別評点がすべて「4」以上で,また総合得点でも14.3点(ただし一人の審査員のみ(4)が回答保留)と高得点を得ました。しかしながら,(2)の評点だけは平均2.3となり,研究計画・方法の妥当性の面でいくつかの問題が指摘されました。
選考委員から送られた審査結果報告書を審査委員長が総括し,「申請者の今後の研究の進展を期待したいので,私としては「受賞に適している」と判断したい」旨を2023年2月10日に返信しました。これについて選考委員からメールでコメントを頂き,受賞について異議は出なかったため,同年2月13日に審査委員長が今回の応募者は「受賞に適している」ということで合意したと判断できる旨審査員に連絡し,金山英莉花氏を受賞候補者として推薦することに決定しました。

5.講評

 昨年度から応募資格を改定して応募範囲を広げましたが,今年度の応募者数はわずか1件でした。応募者なし・受賞者なしという事態は避けることができましたが,昨年度と同様応募者が少ないことに変わりがありません。今後は若手研究者を指導している会員に対しても,改めて若手会員研究奨励賞についてのアナウンスが必要かもしれません。  選考経過にありますように,今年度受賞された金山氏の研究については,研究計画や方法について課題はあるものの,審査委員全員から高い評価が得られ,選考委員会において全会一致で受賞が決定いたしました。代表的な意見として,ある審査員の講評を上げておきます:
「幼児教育での音楽活動,とくに歌唱指導について,心理学的な特徴を把握した上で,実践的な指導・援助の方法を新たに提起しようとする意欲的な研究であり,本学会の「若手会員研究奨励賞」の受賞に値する貴重な研究と評価される。」
「新規性の高い大変興味深く,意義のある研究と思います。「マルチモーダルな音程知覚」による歌唱指導を(審査者が)受けることができていれば,自分も歌をうまく歌えるようになったのにと考えてしまいました。」