1.「応用心理士」認定制度の経緯 日本応用心理学会(The Japan Association of Applied Psychology;JAAP)は,1933年(昭和8年)に創立された学会で,太平洋戦争中(1941年~1945年)はその活動が停滞していましたが,戦後逸早く復活し,他学会に先駆けて1946年(昭和21年)3月,日本大学(会長:渡辺徹)で復興第1回大会を開催しました。その後,積極的に学会活動を展開して,1999年9月には第66回大会を東京国際大学で開催するに至っています。学会の復興当初は,その組織のなかに,教育心理部会・臨床心理部会・産業心理部会・犯罪心理部会・相談部会など多岐にわたる部会を持つ全国的な学会でした。やがてこれらの分野はそれぞれ1つの学会として独立していきました。本学会は,その後も全国的大会と公開シンポジウムおよび機関誌『応用心理学研究』の発行など活発な活動を続けております。 この日本応用心理学会は,復興してから約50年の間,さまざまな社会活動を展開してまいりましたが,その活動の1つに「心理技術者養成教育課程に関する提案」というのがあります。これは1955年(昭和30年)に本学会から各大学に提出されましたが,当時はこのような問題について社会も学界もあまり熱意を持っていませんでした。ところが,1990年8月に「(財)日本臨床心理士資格認定協会」が発足し,「臨床心理士」という資格制度を誕生させ,さらにそれとほとんど同じころに日本心理学会から「認定心理士」という資格制度が発足しました。これらはすべて1955年の本学会の活動に源流を持っているものなのです。本学会はこれら2つの資格制度を参照して,新しく「応用心理士」という資格を世に送り出すことになりました。 そこで,1991年1月から本学会常任運営委員会のなかに資格認定制度検討世話人会(代表:中村昭之)を発足させ,各方面から意見を聴取しながら準備を進めてまいりましたが,1991年11月に「応用心理士」(仮称)資格認定検討委員会(委員長:大村政男)を正式に発足させました。その後,この委員会と常任運営委員会で資格認定制度の具体的な問題について検討を重ねた結果,日本応用心理学会認定 「応用心理士」認定制度の原案を作成することができました。そして,1993年9月の鹿児島大学における第60回大会(会長:島田俊秀)の運営委員会および会員総会で“日本応用心理学会認定 「応用心理士」認定制度規則・同認定審査委員会規則・同認定手続細則”が承認され,この制度が正式に制定される運びとなり,1995年6月より運用されることになりました。 この資格は,認定審査委員会の審査を経て付与するものです。学会が心理技術者についての発議をしてから約40年,ようやく本学会独自の資格を現実化することができたのです。この資格制度が多くの専門家の社会活動に大きな力を与えてくれることを切望するものです。