[テーマ] 『調査法のいま ~ 理論と技法,実践,そして展望 ~』
社会科学における研究手法として,調査は欠かすことのできないものであり,質問紙法を筆頭に,観察やインタビューなど,さまざまな手法を駆使してさまざまな場面でデータが収集され,分析がなされて,科学の発展に寄与しています。心理学系や社会学系の大学・大学院でもカリキュラムの中には必ず調査法に関する教育が含まれています。 それだけ私たちにとって身近なものとして意識されている「調査」ですが,ではその理論や技法について,私たちはどれほど正確な知識を持ち合わせているでしょうか。また,最近はインターネット上でのいわゆるWeb調査なども頻繁に行われるようになっていますが,私たちはそうした新しい調査技法についてどれほど正確な知識を持ち合わせているでしょうか。そして,調査の技法や実践の発展に,心理学はどのように貢献していくことができるのでしょうか。 今回の公開シンポジウムでは,調査の方法論や技法についての「いま」を俯瞰し,今後の展望について探っていきたいと考えています。話題提供をお願いした3名の研究者は,調査についての理論や技法について研究されている方,あるいはフィールドでの実践経験豊かな方であり,いずれも今回のテーマに適した話題を提供いただける方々です。 企画委員会としては,この公開シンポジウムをきっかけに,応用心理学の世界でも調査法に関する議論が大いに盛り上がることを期待しています。 |
[日時] 2016年11月19日(土) 13時30分~16時(予定) [場所] 東京未来大学 ◆入場・参加費無料(事前申込み不要) 最寄駅からの道順 [企画] 日本応用心理学会企画委員会 [共催] 東京未来大学モチベーション研究所 [司会] 谷口 淳一 氏(帝塚山大学) |
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[話題提供者] | |
(1) | 予備調査・プリテストの革新 ━ 学際的研究をめざして ━ 木村 邦博 氏(東北大学文学研究科) 1980年代半ばから,認知科学等の知見や方法にもとづいて調査法を改善しようという学際的アプローチが発展してきた。特に予備調査・プリテストに関しては,従来の方法はいきなり「本番同様の舞台稽古」をするようなものだったという反省から,代替的あるいは補完的な方法が推奨されるようになった。それには,認知面接法,行動コーディング,パラデータ分析,無作為配分実験,統計的モデリングにもとづくデータ解析,などがある。この報告では,統計的モデリングにもとづく既存データの解析の一例として,複数回答形式質問における黙従傾向の問題を潜在クラス分析によって検討した研究を紹介し,無作為配分実験研究などへの展開について考察する。 |
(2) | Web調査の可能性と課題 ━ 調査票設計とパネル管理 ━ 山田 一成 氏(東洋大学社会学部) わずかな研究費で成人男女1,000人の調査が可能。たった2日で10,000人規模の大調査が完了。そんな実証研究を現実のものとする公募型Web調査は,今,日本で最も頻繁に使われ,大きな期待を集める調査法である。しかし,そうしたWeb調査は本当に正しく使われているだろうか。回答形式を変えただけで大幅に低下する回答率。予想もしなかった因子パターンの析出。そんな結果に直面し,「どこで間違った?」と思った研究者も少なくないのではないか。本報告では,そんな現状を少しでも改善すべく,Web調査の方法論的基礎研究のなかから,日本における試行と研究成果を紹介する。 |
(3) | 「ワークショップ型」調査の可能性 ━ 地域課題の解決に向けて ━ 石阪 督規 氏(埼玉大学基盤教育研究センター) これまでのローカルコミュニティ調査には,「対象者の本音がなかなかつかめない」「言語化しにくい情報を把握できない」などの課題があるといわれてきた。こうしたなか,対象者自らが,考え,語り,対話することで,アンケートやインタビューでは得られないリアリティのある意見をデータとして取得する「ワークショップ」を取り入れた調査手法が,近年注目されている。「ワークショップ」を用いたコミュニティ調査の事例をふまえ,それらの今日的意義と課題について報告する。 |
[指定討論者] | |
(1) | 田崎 勝也 氏(青山学院大学国際政治経済学部) |
(2) | 浮谷 秀一 氏(東京富士大学経営学部) |