真鍋 一生
[所属]
名古屋大学大学院教育発達科学研究科 博士後期課程
[研究課題名]
教師の指導行動が学習者のコスト認知に与える影響の探索的検討
[研究概要]
本研究は、中学生の中で苦手意識が多く抱かれている数学の授業に焦点をあて、
教師の授業中の指導行動が学習者のコスト認知にどのような影響を与えるのか
探索的に検討することを目的とする。事前に同意が得られた中学校に在籍する生徒を対象に調査を依頼し、
同意を得た生徒に対し数学の授業に関する質問紙調査を3時点で実施し、
各時点で数学の授業スタイル尺度およびコスト認知尺度への回答を求める。
マルチモデル構造方程式モデリングを用いた分析を行い、個人レベルでの授業スタイルの捉え方がコスト認知に与える影響、
クラスレベルでの授業スタイルの違いがクラス単位の平均的クラスコスト認知に与える影響を分析する。
柳瀬 真紀
[所属]
奈良女子大学大学院人間文化総合科学研究科 博士後期課程
[研究課題名]
英語能力の成長マインドセット教育におけるロールモデルの効果
[研究概要]
本研究は、英語学習者が「能力は高めることができる」という成長マインドセットを
内面化するための方法のひとつとして、ロールモデルの効果に焦点をあてる。
研究1では大学生に対し英語学習におけるロールモデルとその理由に関する自由記述を求める
探索的調査を実施し、カテゴリ抽出を行う。
研究2では大学生を対象とした質問紙調査を行う。
英語能力のマインドセットや努力信念等の回答を求めた後に、成長マインドセット教育で用いられる
既存刺激と研究1をもとに作成したロールモデルストーリーを提示する。
提示後に英語能力のマインドセットやロールモデルの認知を測定し、変化と要因間の関連を検討する。
1.応募状況
2025年11月30日を申込締切日(当日消印有効)として募集し、期日までに6名の応募がありました。 審査希望部門は第2部門(教育・発達・人格)が3件、第4部門(健康・看護・医療)が2件、第6部門(産業・交通・災害)が1件となりました。
2.選考委員会
若手会員研究奨励賞規程に基づき、選考委員として委員長 (上瀬由美子常任理事 学会活性・研究支援担当)の他、 常任理事2名(来田宣幸氏・田中真介氏)、委員長指名による委員1名(小竹久実子氏)の、計4名が選出されました。 2025年12月に委員長から選考委員に、予備審査のための資料(応募者が提出した研究計画書と研究業績1点を PDF化したもの(匿名化済))を送付し、委員長宛に審査結果を返送するよう求めました。
3.評価基準
予備審査と最終選考では共に、応募書類を以下の4観点から評価しました。評価はいずれの観点も
「5:優れている~3:基準を満たしている~1:不十分である」の5段階で行いました。
(1)研究課題の学術的重要性・妥当性(「研究目的」欄など)
(2)研究計画・方法の妥当性(「研究計画・方法」欄など)
(3)研究課題の独創性及び革新性(「研究目的」「研究計画・方法」「研究の独創性・意義」欄)
(4)研究遂行能力の適切性(添付業績など)
4.選考経過
2026年2月に選考会議が開かれました。まず委員長によってまとめられた予備審査の結果(全体集計)が提示されました。 観点別評定合計点の平均が10 点〜12.9点に分布したことが説明され、個別の申請ごとに選考委員からのコメントが提示されました。 いずれの申請についても応用心理学の視点から社会的意義が評価された一方、研究計画の不十分さや課題点も指摘されました。 慎重な議論がなされ、観点別評定合計点の上位2つの申請が他の申請の得点をややひき離しており、 さらに4つの観点全てで平均評価が「3.基準を満たしている」以上であったことから、 この2つの研究計画を選出することが全員一致で決定されました。 その後委員長より申請者の名前が委員に開示され、真鍋氏および柳瀬氏2名を奨励賞受賞の候補者として 常任理事会に推薦する形で進められ、2026年3月21日の常任理事会で受賞が決定しました。
5.講評
受賞研究に対する委員の評価の一部を紹介します。まず真鍋氏の申請については、 教師の指導行動がコスト認知に与える影響を検討するという研究枠組みが応用心理学的であることと、 堅実な研究計画が評価されました。今後の期待・課題として、継続的な深化による発展への期待が寄せられるとともに、 コスト認知の先行要因として焦点化されている「教師の授業中の指導行動」について 質問紙調査実施前に既存研究との関連や仮説を明確化し、調査対象者の数についてサンプルサイズ計算を行うことの必要性が指摘されました。 柳瀬氏の申請は、氏がこれまで行ってきた研究から抽出された疑問をもとに ロールモデルに焦点をあてたマインドセット育成が研究目的となっていました。 教育場面における個人差という重要な課題に対し探索的に取り組もうとする意欲とともに、 一連の研究の内容や手続きが明確であり実現性の高い研究計画と評価されました。 今後の期待・課題として倫理的配慮の仕方に関する検討や、研究教育の内容との関連性や ロールモデルの中の何が重要なのかなど仮説検討の深化が課題として指摘されました。
●来年度申請を考えている方へ
今年度の申し込み件数は6名と例年と比べて多い数となっていました。審査の過程では申請書類に関して、 以下のような点が要改善点としてコメントされ、選考を左右するポイントとなりました。 「研究課題が絞られていない」「実現性に対する懸念 (方法や分析計画が十分検討されておらず研究が練れていない、 1年間の研究として行うには研究計画が大きすぎる、など)」「先行研究の洗い出しが不十分(既に類似の既存研究がある)」。 また、本奨励はこれから行う研究の計画を書いていただきその研究を支援するか否かを審査します。 このため申請書類の中で、研究のどの部分がまだ行われていないユニークなものであるかが明記されている必要があります。 本奨励賞は毎年11月末日を締め切りとしていますので、 応募を考えている方はどうぞ時間に余裕をもって書類の準備をしていただきたいと思います。 また今回の選考会議の中では、研究倫理に関わる記載についても議論の対象となりましたので、申請書類作成の際にはご注意ください。 学会活性・研究支援委員会では、来年度以降の募集の際には倫理的配慮に関する記載を含めるようアナウンスしていきたいと考えています。 なお奨励賞受賞者の方は、受賞の翌年度あるいは翌々年度の応心大会で研究成果を発表する義務を有します。 応募する方はこの点をご確認いただいた上で申請してください。また、受賞された方には義務となる大会発表後、 ぜひ成果を「応用心理学研究」への投稿にもつなげていただけるようお願いいたします。
日本応用心理学会










