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4月, 2024:

メールニュース Vol. 231 2024年4月15日

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日本応用心理学会 メールニュース Vol. 231
2024年4月15日
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この度,
第7期広報委員会より,応用心理学のクロスロード第16号発行について,会員の皆様にお知らせします。

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日本応用心理学会
会員の皆様

広報委員会では,年1回発行される学会広報誌「応用心理学のクロスロード」の編集を担当しています。
第16号ですが,現在,発送作業中です。今しばらくお待ちください。
第16号のPDF版については学会ホームページより既にご覧いただけるようになっております。皆様のお手元に第16号が届くまではこちらをご確認ください。
最後になりましたが,第14号から第16号までの執筆にご協力いただきました先生方,および記事を読んでいただけました会員の皆様に感謝申し上げます。

日本応用心理学会 広報委員会(7期)
委員長 谷口 淳一(帝塚山大学)

以上

応用心理学のクロスロード 第16号

[表紙] [本文]
応用心理学のクロスロード 第16号 応用心理学のクロスロード 第16号

[巻頭言]
  応用心理学会の若手への期待  蓮花 一己(帝塚山大学)

◆CONTENTS

[CROSSROAD ESSAY]
[特別企画1]異分野学際研究のススメ  吉澤 寛之(岐阜大学・広報委員会委員

[特集]日本応用心理学会第89回大会
  大会委員長からの報告  髙石 光一(亜細亜大学)
  大会スタッフからの報告(1)  小川 悦史(亜細亜大学)
  大会スタッフからの報告(2)  鹿内 菜穂(亜細亜大学)
  大会企画シンポジウム報告  木村 友昭(一般財団法人MOA健康科学センター)
  自主企画ワークショップ報告(1)  松田 浩平(東北文教大学)
  自主企画ワークショップ報告(2)  寅嶋 静香(奈良教育大学)
  自主企画ワークショップ報告(3)  大谷 亮((一財)日本自動車研究所)
  自主企画ワークショップ報告(4)  近野 恵(富士通株式会社)
  自主企画ワークショップ報告(5)  塚田 直也(筑波大学附属視覚特別支援学校)
  自主企画ワークショップ報告(6)  田中 真介(京都大学)
  自主企画ワークショップ報告(7)  伊藤 令枝(日本大学)
  研究発表報告(1)  村山 陽(東京都健康長寿医療センター研究所)
  研究発表報告(2)  本多 麻子(東京成徳大学)
  研究発表報告(3)  井梅 由美子(東京未来大学)
  研究発表報告(4)  井川 純一(東北学院大学)
  研究発表報告(5)  高橋 明子(労働安全衛生総合研究所)
  研究発表報告(6)  中野 友香子(科学警察研究所)
  研究発表報告(7)  山内 春佳(帝塚山大学大学院)
  教育発表報告(1)  山本 真菜(日本大学)
  教育発表報告(2)  猪鼻 ももこ・佐藤 洋亮・露木 麻衣(日本大学)
  教育発表報告(3)  深見 将志(日本大学)
  教育発表報告(4)  藤澤 虎太郎(日本大学)
  次回大会委員長の挨拶  谷口 淳一(帝塚山大学)

[アワード]
  齊藤勇記念出版賞受賞  松浦 常夫
  若手会員研究奨励賞  金山 英莉花(同志社大学)
  学会賞(奨励賞)  田中 共子(岡山大学)・沼 柊門(メディカル・ケア・サービス関西株式会社)
  優秀大会発表賞(1)  藤田 主一(日本体育大学)
  優秀大会発表賞(2)  塚田 直也(筑波大学附属視覚特別支援学校)
  優秀大会発表賞(3)  有木 永子(日本大学)
  優秀大会発表賞(4)  異儀田 はづき(立正大学大学院/東京女子医科大学)
  優秀大会発表賞(5)  紺野 剛史(富士通株式会社)
  優秀大会発表賞(6)  種ケ嶋 尚志(日本大学)

[会員だより]公開シンポジウム
  「ネガティブな感情・心理の活用と応用」参加記  谷田 林士(大正大学・広報委員会委員)

[特別企画3]理論と応用を両立する研究者へのインタビュー
  谷田 林士(大正大学・広報委員会委員)

[書評 おすすめの1冊]
  『隣の先生に学ぶ 心理学ベースの授業づくり』  柿本 敏克(群馬大学)

[コラム&トピックス]
  雑学心理学  森下 雄輔(大阪国際大学)

[特別企画]
  応用心理士を対象とする調査報告  田中 堅一郎(日本大学)・稲葉 隆(株式会社日本カラーデザイン研究所)・小林 敦子(川越市男女共同参画審議会)

[常任理事会通信]
  国際交流委員会  川本 利恵子(湘南医療大学)
  齋藤勇記念出版賞選考委員会  川本 利恵子(湘南医療大学)
  機関誌編集委員会  上瀬 由美子(立正大学)
  学会活性・研究支援委員会  田中 堅一郎(日本大学)
  広報委員会  谷口 淳一(帝塚山大学)
  企画委員会  桐生 正幸(東洋大学)
  倫理委員会  田中 真介(京都大学)
  事務局だより  軽部 幸浩(日本大学)
  学会賞選考委員会  木村 友昭((一財)MOA健康科学センター)
  学会史編纂委員会  委員長:古屋 健(理事長)・委員:軽部 幸浩,藤田 主一
  心理学検定  小林 剛史(文京学院大学)

[学会だより]
  2022年度日本応用心理学会学会賞
  入会申込書
  「応用心理士」のご案内  小林 剛史
  「応用心理士」資格認定申請のご案内

[編集後記]


創刊号 第2号 第3号 第4号 第5号 第6号
創刊号 第2号 第3号 第4号 第5号 第6号
第7号 第8号 第9号 第10号 第11号 第12号
第7号 第8号 第9号 第10号 第11号 第12号
第13号 第14号 第15号 第16号
第13号 第14号 第15号 第16号

応用心理士を対象とする調査報告

2024年3月31日

日本応用心理学会 学会活性・研究支援委員会
応用心理士を対象とする調査小委員会
 委 員 長:田中堅一郎
 委員:稲葉隆,小林敦子

 応用心理士の資格を持つ日本応用心理学会会員を対象に調査を行った。応用心理士を対象とする調査小委員会(以下,小委員会)では,2023年11月 3日に調査結果の概要を共有するとともに,結果について討議を行った。その内容も踏まえて,以下に調査結果を報告する。
 なお,今回の「応用心理士を対象とする調査」実施にあたっては,日本応用心理学会からの支援を受けた。

1.調査目的

 応用心理士の上級資格設置を検討する上で,現状の応用心理士会員の意見を聴取する。調査結果から,上級資格(上級応用心理士)を設置することに対する様々な意見を把握する。

2.調査項目

 Google Formsおよび郵送調査ともに,付録1に示された10項目から構成された。

3.調査

(1)調査実施期間 2023年9月4日(月)から10月2日(月):①オンライン調査は,2023年9月4日(月)~9月20日(水),②郵送調査は, 2023年9月4日(月)~10月2日(月)到着分まで。
(2)調査対象者 2023年9月1日において応用心理士の資格をもつ日本応用心理学会員223名を対象とした。①オンライン調査では,メール配信した182名のうち66名から回答を得た(回収率:36.3%)。郵送調査では,②調査用紙を送付した41名のうち26名から回答を得た(回収率:63.4%)。よって,調査依頼した計223名のうち92名から回答を得た(回収率:41.3%)
(3)調査方法 メールアドレスを登録した会員にはGoogle Formsで調査主旨を説明した文面と質問項目を2023年9月4日(月)に送信した。メールアドレスが登録されていなかった会員には郵送調査で調査主旨を説明したカバーレターと調査用紙を2023年9月4日(月)に一斉送付した。なお,メールアドレスを有していたものの,Google Formsから返信ができない旨連絡があった1名を郵送調査に振り替えた。

4.調査結果(1):項目別分析

(1)調査回答者の属性 回答者の年齢(図1),性別(図2),職業(図)は以下の通りであった。図の欄外に示された「職業3区分」によれば,研究者;40名(43.5%),実務家;36名(39.1%),その他(大学院生含む);14名(15.2%)となった。

図1 回答者の年齢

図2 回答者の性別

図3 回答者の職業

(2)調査項目別回答結果
a)Q1応用心理士申請の動機:応用心理士を申請した動機として最も多いのは「①資格取得のため」で全体の5割弱(46.7%)だった。次いで,「④学会員から勧められたため」が約2割(20.7%)で,「②研究活動における目標設定」(12.0%)と「③学会認定(お墨付き)が欲しかったため」(9.8%)がそれぞれ1割程度だった(図4)。
図4 Q1「あなたが応用心理士を申請した動機は何ですか(1つだけマークしてください)。」

b)Q2応用心理士肩書の使用経験:応用心理士の肩書については,「①名刺などの肩書に応用心理士と書いたことがある」(31.5%),「②ビジネス等の場で応用心理士を名乗ったことがある」(28.3%)が共に3割程度だった。「④その他」の回答には,履歴書への記載で使用した例もみられた。使用経験のない会員は4割強だった(図5)。
図5 Q2「あなたは応用心理士の肩書きを使用したことがありますか(複数回答可)。」

c)Q3応用心理士取得によるメリット:応用心理士取得のメリットは,「⑦自分に自信がついた」(35.9%)と「⑥他者からの信頼感が増した」(26.1%)の2つが特に多かった。一方,その他の回答として「メリットはない」が15.2%を占めた(図6)。
図6 Q3「あなたが応用心理士を取得して得られたメリットは何ですか(該当するものすべて回答可)。」

d)Q4応用心理士取得の他会員への推奨:応用心理士資格の取得を推奨することに前向きな割合は,「1.ぜひ勧めたい」(19.8%)と「2.やや勧めたい」(25.3%)を合わせて,半数弱(45.1%)であった。しかし,推奨に対して消極的な意見も1割強(12.1%)あった(図7)。
図7  Q4「あなたはお知り合いの学会員に応用心理士を取得することを勧めますか(1つだけマークしてください)。」

e)Q5「応用心理士 上級資格」の申請意向:応用心理士 上級資格に対する申請意向として,前向きな意見は全体の4割強(「1.すぐに申請したい」(13.2%)と「2.申請を考えてみたい」(29.7%)の合計42.9%)だった。しかし,「3.申請しようとは思わない」も約3割(31.9%)あり,1/4の回答者は「わからない」と回答された(図8)。
図8 Q5「もし日本応用心理学会で応用心理士の上級資格が設置されたら、あなたはその資格に申請したいですか。(1つだけマークしてください)。」

f)Q6応用心理士に関する要望・意見:応用心理士に関する要望・意見がある回答者は全体の1/3程度(36.3%)だった。主な要望としては,「社会的な認知度向上に関する要望」「研修会の開催に関する要望」「実践的研究のサポートに関する要望」「研究交流に関する要望」などがあった(図9,詳細については付録2~4参照)。
図9 Q6-1「あなたが応用心理士に関して日本応用心理学会に望んでいることはありますか。(1つだけマークしてください)。」

g)Q7 「応用心理士会」への入会意向:応用心理士会が設立された場合,入会に前向きな意見は全体の約7割(「①ぜひ入会したい」(14.3%)と,「②条件があえば,入会したい」(53.8%)の合計68.1%)を占めた。入会に消極的な意見は2割弱だった(「③入会したいと思わない」(18.7%))(図10)。
図10 Q7「応用心理士で構成される「応用心理士会」が設立されたら、入会したいですか(1つだけマークしてください)。」

(3)項目別分析の要約
a)応用心理士申請の動機(Q1):年齢に比例して学会員からの勧めにより応用心理士を申請しており,若い年齢ほど研究活動の目標設定が動機となっている。また,実務家会員は研究者会員よりも学会による認定が申請理由であった。
b)応用心理士肩書の使用経験(Q2):応用心理士の肩書きは,名刺記載とビジネスでの使用で会員の3割が活用している。特に実務家会員において活用の割合が高いことが特徴である。しかし,40代以下は他年代に比べてやや活用度が低かった。
c)応用心理士取得によるメリット(Q3):最もメリットとされているのは自己への自信であり,次が他者からの信頼感の増加であった。前者は40代以下の若手会員に顕著であるが,一方でこの年代では応用心理士取得が学会への積極的な参加には結びついていなかった。  また,自己への自身・他者からの信頼感は実務家会員にとって大きなメリットとなっている。逆に,自由記述において,応用心理士取得にメリットがないという意見が全体の15%あった。
d)応用心理士取得の推奨(Q4):応用心理士取得の推奨に肯定的な割合は全体の45%で消極的な割合(12%)を大きく上回っている。しかし,40代以下の会員は他年代に比べて推奨に肯定的な意見がかなり少ない(2割以下)。研究者と実務家では差はなかった。
e)「応用心理士 上級資格」の申請意向(Q5):全体の4割が上級資格の申請に前向きである。特に40代以下の会員と実務家会員の申請に積極的な面がある(すぐに申請したいという割合が2割以上)。
f)応用心理士に関する要望・意見(Q6):自由記述で得られた主な要望は,①応用心理士の社会的な認知度向上,②研修会の開催,③実践的研究のサポート,④研究交流に関する要望にまとめられる。
g)「応用心理士会」への入会意向(Q7):応用心理士会への入会に前向きな意見は高く,全体の7割だった。

5.調査結果(2):項目間の関連性

 「もし日本応用心理学会で応用心理士の上級資格が設置されたら,あなたはその資格に申請したいですか(Q5)」を中心に,Q7,Q4,Q6-1を分析対象とする多重応答分析を行い,第1成分,第2成分が抽出された。
(1)Q5について,図11の曲線で描かれたように,カテゴリーポイントの値から見ると,上級資格の申請に否定的もしくは消極的な回答が左下に布置し,肯定的もしくは前向きな回答が右上に布置していた。この結果を基に,それ以外の項目群の回答についての結果を読み解くことができる。
図11 多重応答分析の変数主成分:その1(Q5; もし日本応用心理学会で応用心理士の上級資格が設置されたら、あなたはその資格に申請したいですか)

(2)Q7(応用心理士で構成される「応用心理士会」が設立されたら,入会したいですか)について図12に曲線で示されたように,カテゴリーポイントの値は左下から右上につれて,応用心理士会入会に前向きであることがわかる。また,この布置は図11の結果と類似している。これらの結果から,応用心理士会により積極的な回答者は上級資格の申請に肯定的もしくは前向きで,応用心理士会入会にあまり積極的でない回答者は上級資格申請に否定的もしくは消極的であることが読み取れる。
図12 多重応答分析の変数主成分:その2(Q7;応用心理士で構成される「応用心理士会」が設立されたら、入会したいですか)

(3)Q4(あなたはお知り合いの学会員に応用心理士を取得することを勧めますか)について図13に曲線で示されたように,カテゴリーポイントの値は左下から右上につれて,応用心理士取得の勧誘に積極的であることがわかる。また,この布置も図11の結果と類似している。これらの結果から,応用心理士取得の勧誘に積極的な回答者は上級資格申請に肯定的もしくは前向きで,応用心理士取得の勧誘に消極的な回答者は上級資格申請には否定的もしくは消極的であることが読み取れる。
図13 多重応答分析の変数主成分:その3(Q4;あなたはお知り合いの学会員に応用心理士を取得することを勧めますか)

(4)Q6-1(あなたが応用心理士に関して日本応用心理学会に望んでいることはありますか)について図14の結果を図11の布置と対応させると,図14の次元1のレンジが狭いものの,望むことが「ある」と回答しているほど上級資格申請に前向きで,「ない」の回答者は否定的もしくは消極的だと理解できる。
図14 多重応答分析の変数主成分:その4(Q6-1 あなたが応用心理士に関して日本応用心理学会に望んでいることはありますか)

(5)回答者の分類と特徴
a)回答者の分類
 多重応答分析により回答者に付与された2次元のオブジェクトスコアを使用してward法による階層クラスター分析を行い,それにより得られた樹形図から回答者を3つのグループに大別した。グループ分けされた各回答者のオブジェクトスコアの散布図を図15に示す。
図15のとおり,第1グループは原点の周囲から第2象限に向かって布置され,グループ2は,横軸はプラス方向,縦軸はプラスとマイナス両方に広がっていた。第3グループは,縦横の軸のいずれもマイナスとなる第3象限を中心に広がっていた。
図15 クラスター分析による回答者の分類

b)各グループの特徴
 図4の回答者グループの特徴をこれまでの結果に照らして解釈する:
グループ1:年代では60,70代,90代。申請動機では「研究活動の目標設定」が布置されており,資格取得のメリットに関しては「研究活動がしやすくなった」「自分に自信がついた」「学会に参加するようになった」が布置されていた。「今後の意向に関する項目」では,上級資格に「すぐ申請したい」,応用心理士会が設立されたら「是非入会したい」,他の学会員にも資格取得を「是非勧めたい」,「学会に望んでいることがある」といった項目が布置されていた。
グループ2:年代では80代,申請動機では「学会員からの勧め」が,資格取得のメリットの質問項目では,応用心理士の肩書は使用しない回答が布置され,今後の意向に関する項目では,上級資格は「申請しようと思わない」,応用心理士会に「入会したくない」,学会員に資格取得を「全く勧めたくない」といった項目が布置されていた。
グループ3:資格取得のメリットとして選択された「ビジネスで役に立った」「職場で仕事がしやすくなった」「実践活動しやすくなった」などの項目が布置されていた。グループ3の位置には,今後の(上級資格,応用心理士会等への)意向に関するいずれの項目群も布置されていなかった。

6.考察

(1)項目別回答から分かること

 応用心理士上級資格の設置について,調査回答者全体の4割が上級資格が設置された場合の申請に前向きであった。特に,40代以下の若手会員と実務家会員は「すぐに申請したい」という積極的な意向が2割以上あった。

(2)項目間の関連性から分かること

 多重応答分析とそれに続くクラスター分析の結果から以下のことが示唆される。
a)上級応用心理士申請に対して肯定的な意見をもつ応用心理士は,応用心理士という資格に対しても肯定的で,日本応用心理学会および学会活動に前向きにコミットしていることが示唆される。
b)上級応用心理士の設置は(現在の)応用心理士の研究・実践活動を高めるための手立てとして有効であることが示唆される。
c)クラスター分析の結果から分類された各グループの特徴から,上級資格申請や応用心理士会入会の意向の高さは,「研究活動・学会」の高さと連動しており,これらへのコミットメントの高さに関連があると考えられる。また,グループ3は「ビジネス活用」の動機が高いグループと見做されるが,上級資格の意向を高めるためには,研究活動や学会へのコミットメントを高めることも重要であると考えられる。

(3)調査結果が上級資格設置に示唆すること

a)上級応用心理士への申請に前向きな回答者は42.9%であったが,分析結果から考えて,応用心理士及び応用心理士上級資格によって学会員の実践的な活動のサポートができ,学会の社会的価値の向上につながると思われる。よって,応用心理士上級資格の設置は妥当であると考えられる。
b)応用心理士資格取得者(と学会員)の満足度向上につながる施策の検討について
調査結果から,①応用心理士の価値向上と②会員相互の交流促進などが主な会員ニーズとして考えられる。具体的には,①応用心理士の価値向上のために,応用心理士の社会的な認知度を上げるための方法の検討が必要であり,若手・実務家会員の申請意向が高かったことから,上級資格の設置も必要であると思われる。
また,②会員相互の交流推進のために,応用心理士会の開設の検討,研修会の実施や会員相互の交流につながる機会の提供に関する検討,応用心理学会分科会の設置に関する検討が考えられる。また,その他として,若手会員の学会参加意識の向上による学会活性化,実務家会員の実践的研究のサポートについての検討も望まれる。
上級応用心理士が設置された場合に申請者を増やす手立てとして考えられることは,資格取得者への研究支援や,学会へのコミットメントを高める施策を今後も継続的に展開すると同時に,ビジネス上の応用心理士資格の利用が実践的な研究活動にもつながるよう,産業の場での実践と研究の交差的支援策を生み出す必要があるだろう。

(4)調査の課題

a)回答率(返信数)の低さ:オンライン調査(Google Forms)による回収率が低かった(36.3%)。この回収率から,調査結果が実際の応用心理士の回答分布と対応しているか疑問が残った。
b)Google Formsによる調査方法の課題:今回の調査では,未回答の対象者にリマインドしなかったこのことも回答率の低さに影響したと思われる。

付録

付録1:調査項目

(1)Q1.あなたが応用心理士を申請した動機は何ですか:
 ① 資格取得のため
 ② 研究活動における目標設定として
 ③ 学会認定(お墨付き)が欲しかったため
 ④ 学会員から勧められたため
 ⑤ その他(                     )
(2)Q2.あなたは応用心理士の肩書を使用したことがありますか(該当する箇所にすべて〇印をつけてください):
 ①名刺などの肩書に応用心理士と書いたことがある
 ②ビジネス等の場で応用心理士を名乗ったことがある
 ③使用したことはない
 ④その他(                  )
(3)Q3.あなたが応用心理士を取得して得られたメリットは何ですか(該当する箇所にすべて〇印をつけてください):
 ① 積極的に学会に参加するようになった
 ② 研究活動がしやすくなった
 ③(研究成果に基づいた)実践活動がしやすくなった
 ④ 職場での仕事がしやすくなった
 ⑤ ビジネスで役に立った,得をした
 ⑥ 他者からの信頼感が増した
 ⑦ 自分に自信がついた
 ⑧ その他(              )
(4)Q4.あなたはお知り合いの学会員に応用心理士を取得することを勧めますか:
 ① ぜひ勧めたい
 ② やや勧めたい
 ③ どちらともいえない
 ④ やや勧めたくない
 ⑤ まったく勧めたくない
(5)Q5.もし日本応用心理学会で応用心理士の上級資格が設置されたら,あなたはその資格に申請したいですか:
 ①すぐに申請したい
 ②申請を考えてみたい
 ②申請しようとは思わない
 ④ わからない
(6)Q6-1 あなたが応用心理士に関して日本応用心理学会に望んでいることはありますか:
 ①ある   ② ない
 Q6-2 (「①ある」と答えた方は)望んでいることは具体的に何ですか。
(7)Q7.応用心理士で構成される「応用心理士会」が設立されたら,入会したいですか:
 ① ぜひ入会したい
 ② 条件があえば,入会したい
 ③入会したいと思わない
 ④ わからない
(8)Q8.あなたの現在の職業はどれですか:
 ① 大学・大学院教員(教授から助教まで)
 ② (大学以外の)学校教員(専門学校・高校・中学・小学校・幼稚園)
 ③ 保育士
 ④ 医療従事者(看護師,理学療法士等)
 ⑤ 学校職員
 ⑥ (教育相談施設,職業相談所等の)相談員・カウンセラー
 ⑦ (国家もくしは地方)公務員
 ⑧ 大学院生(社会人大学院生を含む)
 ⑨ 自営業者(経営コンサルタント業,税理士等)
 ⑩ 会社員・会社役員
 ⑪ その他(                      )
(9)Q9.あなたの大まかな年齢を教えてください:
 ①20歳代
 ②30歳代
 ③40歳代
 ④50歳代
 ⑤60歳代
 ⑥70歳代
 ⑦80歳代
 ⑧90歳代
(10)Q10.あなたの性別を教えてください:
 ①男性  ②女性  ③その他  ④回答しない

付録2

 Q6応用心理士に関する希望・意見(その1):Q6-2、Q6-1で「①ある」と答えた方に伺います。望んでいることは具体的になんですか。

付録3

 Q6応用心理士に関する希望・意見(その2):Q6-2、Q6-1で「①ある」と答えた方に伺います。望んでいることは具体的になんですか。

付録4

 Q6応用心理士に関する希望・意見(その3):Q6-2、Q6-1で「①ある」と答えた方に伺います。望んでいることは具体的になんですか。

メールニュース Vol. 230 2024年4月4日

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日本応用心理学会 メールニュース Vol. 230
2024年4月4日
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この度,
関西大学社会安全学部の公募のお知らせがございました。
会員の皆様方に,お知らせいたします。

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関西大学社会安全学部の専任教員募集のお知らせ
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【募集の背景,プロジェクトの説明】
リスクコミュニケーション・リスク認知論の分野に関して,人文・社会・自然科学の複合領域にまたがる研究業績や実務経験をふまえて社会安全学の教育・研究を担い,さらに将来にわたりこの分野に挑戦・開拓する人材となる専任教育職員を募集します。
なお,男女雇用機会均等法第8条(女性労働者についての措置に関する特例)に基づき,女性教員の割合が相当程度少ない現状を積極的に改善するための措置として女性に限定した公募を実施するものです。

【担当予定】
リスクコミュニケーション・リスク認知論に関わる諸分野

【着任時期】
 2025年4月1日

【募集期間】
 2024年2月19日~2024年6月30日(消印有効)

詳細は下記をご確認ください。
・JREC-IN https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?id=D124021152

以上

2023年度 若手会員研究奨励賞受賞者

 権野 めぐみ

[所属]
  京都工芸繊維大学
[研究課題名]
  クラシックバレエ指導における言葉がけの効果と動作に関する研究  熟練者と成人学習者の比較
研究概要(「研究計画書」より,一部略)
 バレエの動作に関する指導上の言葉がけを定量的に評価し,指導に効果的な言葉がけを検討することを目的とする。研究1では,バレエの基本動作カンブレを行う際の言葉の分かりやすさについて質問紙を用いた定量的調査を行う。研究2では,研究1で用いた言葉がけを対象者に提示し,バレエレッスンでカンブレを実施し実験的検証を行う。

 巻田 晴香

[所属]
  同志社大学大学院心理学研究科博士後期課程2年次生
[研究課題名]
  適切な自己批判の促進による失敗後の動機づけの改善:新しいアプローチでの介入法の開発と効果検証
研究概要(「研究計画書」より,一部略)
 適切な自己批判を促進するという新たなアプローチに基づいた自己批判への介入法を開発すること,または介入法が失敗後の動機づけに及ぼす影響を検討する。具体的には,不適切な自己批判を低減させる適切な自己批判を増加させる介入法を開発する。


1.応募状況

 2023年度若手会員研究奨励賞は,2023年11月30日を申込締切日(当日消印有効)として募集されました。期日までに所定の応募書類を提出した応募者は4名で,旧審査部門でいえば第2部門に該当する内容が3件,第1部門該当の内容が1件でした。なお,提出書類は学会事務局(国際ビジネス研究センター)担当者が確認し,12月5日に審査委員長(田中堅一郎)の所属機関宛に郵送されました。

2.選考委員会

 応募者の提出した研究計画書と研究業績1点をPDF化し,審査を実施しました。選考委員会の構成は,委員長である田中堅一郎(学会活性・研究支援担当常任理事)の他,常任理事2名(軽部幸浩氏・上瀬由美子氏),委員長指名による委員2名(伊坂裕子氏・和田万紀氏)の合計5名でした。

3.評価基準

 応募書類は以下の4つの観点について「5:優れている-3:基準を満たしている-1:不十分である」の5段階で評価されました(20点満点)。
(1) 研究課題の学術的重要性・妥当性(「研究目的」欄など)
・学術的に見て,将来の発展が期待できる推進すべき重要な研究課題であるか。
・研究構想や研究目的が具体的かつ明確に示されているか。
・日本応用心理学会が支援するに相応しい研究上の意義が認められるか。
(2) 研究計画・方法の妥当性(「研究計画・方法」欄など)
・研究目的を達成するため,研究計画は十分練られたものになっているか。
・研究倫理上の配慮が必要とされる研究では,適切な配慮がなされているか。
(3) 研究課題の独創性及び革新性(「研究目的」「研究計画・方法」「研究の独創性・意義」欄)
・研究対象,研究手法やもたらされる研究成果等について,独創性や革新性が認められるか。
(4) 研究遂行能力の適切性(添付業績など)
・これまでの研究業績等から見て,研究計画に対する高い遂行能力を有していると判断できるか。

4.選考経過

 選考委員会は,メールによる審査書類の送信・審査結果の受信を繰り返し、最終決定のためのZoom Meetingによる会議が開催されました。まず,2023年12月11日より選考委員としての依頼を行い,承諾された後に応募者から提出された応募用紙を審査員に送信しました。
 各審査員が提出した審査結果から,審査員5名による応募者の総合評点は16.75から20.5の範囲(5段階評定による4項目について5名の平均得点を加算,評点範囲;5~25点)となりました。最高点の応募者Ⅱ(権野氏)以外の3名の応募者の得点は拮抗しており,審査員講評の評価も分かれていました。そこで,審査委員長は最終選考のために以下の選択肢を用意し,2024年2月5日に各審査委員に提示しました。
 A.応募者ⅡとⅢ(巻田氏)は受賞者候補として採択,相対的に評価点の低かった応募者Ⅰ,Ⅳは不採択とする。
 B.評点最下位の応募者Ⅰは受賞者候補として不採択とし,のこりの3名(応募者Ⅰ,Ⅱ,Ⅳ)を採択とする。
 C.応募者全員を採択とする(4名採択の可能性については,事前に理事長に相談し了解を得た)。
 受賞候補者の最終決定を行うため,3月16日(土)午前9時55分より,審査委員全員出席のもと,Zoomを用いた審査委員会会議が開かれました。会議では最初に,審査委員長が候補者4名の紹介と各々の評点一覧を開示して,次いで各委員の意見を聴取しました。
 まず,最高点の応募者Ⅱは受賞候補として適切であり採択と了承されました。次に,研究計画の内容に不充分な点があると指摘された応募者Ⅰが不採択となりました。最後に,応募者Ⅲ,および審査評価が大きく分かれた応募者Ⅳが採択可否の論点となりました。審議の結果,目立って優れた評価を得られなかったものの応募者Ⅲは当該賞が若手会員の奨励を目的とする趣旨に基づき,受賞候補として採択となりました。応募者Ⅳについては,研究計画としては教育現場での実践的価値をもっているが,研究方法に研究倫理上の問題を孕んでおり,研究の独創性の評価も高くありませんでした。最終的には応募者Ⅳは受賞候補として不採択となりました。
 以上の審査委員会議での審議を経て,若手会員研究奨励賞の候補者として,権野めぐみ氏と巻田晴香氏を受賞候補者として推薦することに決定しました(会議は午前11時頃閉会しました)。その後、2023年3月29日(土)に開催された第7回常任理事会で上記の件が審議され、お二人が受賞者として承認されました。

5.講評

 審査委員が会議で提起された問題と応募者の研究計画についてのコメントを以下に纏めて示します。

  • 受賞者として不採用となった応募者Ⅰについては,研究の独創性および研究方法の詳細を再考された上,次年度以降再応募されることが期待される。
  • 同じく受賞者として不採択となった応募者Ⅳについては,(もし研究計画通りに研究が行えられれば)教育現場をフィールドにした研究が行いにくい昨今の現状にあって貴重な研究となるだろう。研究の社会的意義は認められるので,研究倫理上の問題を再考されて,次年度以降再応募されることが期待される。
  • 受賞者となった応募者Ⅱは,改訂された応募資格をクリアしており,研究計画の内容も評価できるが,『過去の実績からして「若手会員」と見なせるのか』というコメントがあった。
  • 受賞者となった応募者Ⅲについては,研究の社会的意義や今後の応用的展開も視野に入れながら今後の研究を行ってもらいたい。
  • 審査の公正性の担保のために,審査員に送信される研究計画書における応募者の所属名,推薦者,さらに添付資料の学会発表や掲載論文の執筆者名も伏せ字にしてほしい。

6.今年度審査における反省と次年度への展望

 一昨年度から応募資格を改定して応募範囲を広げた結果,今年度の応募者数は4件となり,今までで一番多い応募数となりました。しかしながら,4名の応募者を担当する審査委員の作業負荷は大きくなり,また審査過程でのやりとりも複雑となって手続き上の不備もありました。次年度も今年度の応募状況に満足せず,複数の応募者を確保するために,若手会員および彼らを指導している会員に対して若手会員研究奨励賞についてのアナウンスとプロモーションが必要となるでしょう。

メールニュース Vol. 229 2024年4月1日

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日本応用心理学会 メールニュース Vol. 229
2024年4月1日
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日本応用心理学会会員の皆様におかれましては,ますますご活躍のことと拝察申し上げます。

この度,
自動車安全運転センターより,交通安全等に関する公募による委託調査研究の募集案内が届きましたので,会員の皆様にお知らせします。

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令和6年度 交通安全等に関する公募による委託調査研究の募集のお知らせ
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令和6年度「交通安全等に関する公募による委託調査研究」の募集を開始します。
応募される方は、以下の募集要項を参照にし、別紙にてご応募ください。
※〆切令和6年5月17日

※当該公募情報が掲載されているウェブサイトのURLは下記の通りです。
https://www.jsdc.or.jp/tabid/101/Default.aspx?itemid=508&dispmid=588

以上

メールニュース Vol. 228 2024年4月1日

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日本応用心理学会 メールニュース Vol. 228
2024年4月1日
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吉報です!
日本応用心理学会は,日本臨床心理士資格認定協会第175回理事会にて審議の結果,承認学術団体として承認されました。
このことにより,本学会は,臨床心理士資格更新ポイントを取得できる学会になりました。
喜ばしいことに,承認開始日は遡及され2023年4月1日からです。
昨年度の第89回大会と研修会,学会誌に掲載された論文からポイントの対象になりますので,資格更新にご利用ください。
なお,ポイントに関する詳細は,日本臨床心理士資格認定協会Webサイトなどをご覧くださいますようお願いします。

以上,ご連絡申し上げます。先生方の益々のご活躍を祈念しております。
引き続き,学会活動にご尽力賜れますよう,よろしくお願い申し上げます。

日本応用心理学会  
事務局長 軽部幸浩