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2002年3月31日発刊

日本応用心理学会ニュースレター No.5

   コミュニケーションの広場

目  次
会長挨拶 ………………………………………………………………… 岡村 一成
航空事故調査と応用心理学 …………………………………………… 垣本 由紀子
“意外さ”の効用 ……………………………………………………… 神田 信彦
学会賞を受賞して ……………………………………………………… 足立 浩平
奨励賞を受賞して ……………………………………………………… 北川 公路
研究室紹介(2) 慶應義塾大学 …………………………………… 渡辺 茂
学会ホームページの紹介 ………………………………………………… 浮谷 秀一
応用心理士事務局より …………………………………………………… 岡村 一成
事務局よりお知らせ ……………………………………………………… 荻野 七重


会 長 挨 拶

岡村 一成

このたび,伝統ある日本応用心理学会の大会をお引受けするとともに,学会会長を務めさせていただくことになりました。学会の活動と運営に,会員の皆様方のご協力をよろしくお願い申し上げます。
このところ大会毎にさまざまな提案がなされ,本学会の伝統を維持しながら,活性化に向けた改革が進められております。 そこで,今年度もまた常任理事会から新たなご提案をさせていただきます。
その一つは,大会期間中に行われる研修委員会企画の「研修会」です。これまでの大会開催は,当番校のご尽力に頼り切っておりましたが,常任理事会(委員会)も参画・協力し,大会を充実させようというものです。
当初は「研修会」を,本学会認定「応用心理士」の資質の向上を図ることを目的に検討されておりましたが,広く一般会員をも対象にすることに致しました。それは,心理学の応用分野で活躍されている会費が,大会に参加するとともに知識を確認する場を持つことは意義のあることであり,大会の充実に繁がると考えられるからです。具体的な研修内容や申込方法などについては後日お知らせ致します。会員の皆様の積極的な参加を期待しております。
また,今期の常任理事会では倫理委員会を設け,会員の倫理に関する諸問題の検討を行っております。そして本学会の「倫理綱領」の作成に着手致しました。今大会時の会員総会ではこの「倫理綱領」 もご提案する予定です。
そのほか,理事会では学会運営上の重要な案件についても検討しております。会員総会においてご提案して参りますので,ぜひご出席いただき,忌憚のないご意見を賜りたく存じます。なにとぞこれまでにも増したご協力とご支援をくださいますよう重ねてお願い申し上げます。
(東京富土大学教授)

航空事故調査と応用心理学

垣本 由紀子

世界の事業用定期航空の事故率は,100万回出発当たり約2件と,他の交通機関に較べると著しく低い。10-2レベルである。70年代終りから今日までのこの横這い状態が継続し,さらに減少する傾向にない。ICAOやFAA**を中心に,この事故率をさらに低くすることはできないかとやっきになっている。事故率が低下しない限り,毎年輸送量が増加している現状では,事故発生件数が著しく増加することになるからである。
これらの背景をふまえ,今日,声高に呼ばれていることがヒューマンファクター的アプローチである。他の産業現場同様,航空事故においても原因の7~8割は,ヒューマンエラーである。エラー防止が可能になれば,事故防止につながるという安全の図式ができ上る。そのためにはどうすればよいのか?先ずは,人間の行動特性を理解することが求められよう。―方的に「不注意」で片づけられがちであるが何故それが起きたのか「why」の追究を行わない限りエラー防止にはつながらない。この人間行動のルールを探るブロセスがまさに応用心理学の一端であり,ヒューマンファクター的アブローチであろうと考え
られる。
エラーを無くすことは不可能であっても,人とシステム,人と機器,人と作業手順,人と環境,人と人との関係等の中で,エラーの連鎖をたち切ること,これが応用心理学の分野に求められることではないかと考えている。
*国際民間航空機構 **米国連邦航空局
(実践女子大学教授)

“意外さ”の効用

神田 信彦

非行の相談業務に従事していた頃は,それまでの成功や失敗経験によって積み上げた自分なりの非行臨床理論”に基づいて,このケ一スにはこの方針で行こうと判断していた.その中で得々のケ-スに共通して相談の当初に用いたのは,“意外さ”あるいは“期待はずれ”を用いることであった。
相談所に来所する多くのケースは,親子関係が相当にこじれ,子どもたちは親に対して否定的な見方をしている。同時に子どもが支配権を持つか,お互いに角をつき合わせるなど悪いパターンの親子関係で固定化してしまっている。つまり子どもが“ああ”言えば,観は“こう”言うという関係が知らず知らずのうちに悪いパタ-ンで固まってしまうのである。そこで悪いパタ-ンの跳発に乗らないように,″ああ”言っても,“こう”言わず,例えは“そう”言うようにする。すると子どもは“あれっ”と思う。これは1度だけではだめである。子ども親の一時の気まぐれとしか思わない。この“意外さ”の感覚を確かなものとするためには“そう”言うことを繰り返し行うことである。
やがて親子の普通のコミュニケーションが復活し次のステップに進むことができる。
(文教大学人間科学部助救授)

学会賞を受賞して

足立 浩平

浅学非才の私が学会賞を受賞できるとは思いもよらず,恐縮するとともに,長い歴史をもつ日本応用心理学会からの受賞をまことに光栄に感じております。私は,「へたの横好き」で計量心理学・心理統計学といったマイナーな分野に興味を持ってきましたが,前勤務先の科学警察研究所で要請されたボリグラフ検査研究の主要な背景領域は,上記の分野とはむしろ異質な心理生理学など実験系心理学であり,当初は私には何も出来ないのではと当惑していました。しかし,他の心理テストの分野でも見られるように,検査の判定(テスト評価)の領域では統計的アプローチが有用かも知れない思い,多変量解析の枠組から判定の論理をフォーミュレートするテーマに着手し,応用心理学研究に論文を投稿させてい
ただきました。心理学の知見そのものを応用するというより,このように,心理現象に基づく何らかの方法論を計量的・統計的に定式化する研究が要求される場面は,他の応用心理学の分野にも数多くあるように思われます。このような仕事によって学会賞をいただけたのも,私にお接しいただいた皆様方の御指導や御支援があってこそであり,さらに,間接的に論文や著書を通して勉強させていただいた応用心理学会会員の皆様方のおかげ様と深く感謝しております。なお,私が初めて学会発表をしたのが岩手県で開催された本学会の大会(岩手大学),今回の受賞式も同じく岩手県(岩手県立人学)であり,初心に立ち返れ,感慨をおぼえました。
(甲子園大学人間文化学部教授)

奨励賞を受賞して

北川 公路

この度は,学会奨励賞の表彰の栄に浴しましたことは,身にあまり,いまだ信じがたい気持ちでございます。また,この度の栄誉につきましては,ひとかたならぬ関係各位のご助力とご鞭撻の贈り物と深く肝に銘じております。
私は,行動指標を用いて加齢による行動変化についての基礎的研究を行ってきました。具体的には,オぺラント行動のセルフコントロールパラダイムにおける選択場面や,強化スケジュールなどを用い,高齢者が遅延時間を含めた時間,強化員,強化子等のどの環境要因に対して感度を増加あるいは減少させるかといった点を検討するとともに他の年齢層との比較による加齢に伴う行動パターンの発達変化について研究を行ってきました。これからも基礎的データをべースにし,来るべく高齢社会において生活のしやすい環境をつくりあげる研究につなげていきたいと考えています。そのため,今後とも努力と精進を重ねていく所存でございますが,皆様方の倍旧のご指導,ご援助のほどをお願い申し上げます。
(駒澤大学助手)

研究室紹介(2)
  慶應義塾大学文学部心理学動物実験室

渡辺 茂

慶應義塾大学心理学研究室の動物実験室は1952年に小川隆によって創設された。そこにハーパード大学のスキナーから送られたスキナー箱を設置してハトのオぺラント実験が開始されたのである。その後,何回かの増築,改築を経て,1993年に現在の場所に今の実験室が設置された。2階建て,面積207.36m2,実験室13,飼育室3,手術室,顕徽鏡室などからなり,屋外にはフライイング・ケージが2つある。
研究内容は3つの領域に亘る。ひとつは行動神経科学で,脳損傷実験,電気生理,最近では脳血流の測定が始められている。もうひとつは行動薬理で,薬物の強化効果,弁別刺激効果が検討されている。最後は行動実験で,主として高次認知をオぺラント条件づけを使って検討している。
被験体はプラナリア,アゲハチョウ,メダカ,キンギョ,ウズラ,ブンチョウ,ジュウシマツ,キンカチョウ,ハト,カラス,マウス,ラット,ヒトで,広範囲に旦っている。研究室全体の目標としては行動の系統発生的随伴性を脳の進化と関連づけて解明するというものがあるが,実際にはそれぞれの研究者がいわば無政府状態で勝手に実験している。さらには梁山泊のように公式には心理学研究室の人間ではないものが入り込んで実験をしている。このような無法が罷り通っているのは,ひとつには実験室が独立棟で離れた場所にあることにもよるが,他の教員の寛容または忍耐によるところが大であろう。
(慶應義塾大学文学部教授)

学会ホームページの紹介

浮谷 秀一

当学会のホームページをすでにご覧頂いた方ガは多いと思います。まだご覧になっていない方はぜひご覧ください〔http://www.nii.ac.jp/jaap/〕。また,どんな検索ぺージからも「日本応用心理学会」を入力していただければ,ご覧いただけると思います。
現在ご覧いただける内容は,トピックスとして,来年度の富士短期大学(平成14年4月1日より東京富士大学)での大会日程と子どもの家庭総合研究公開シンポジウムのお知らせです。
ただ,公開シンポジウムは平成14年3月12日(火)実施ですので,これをお読みいただいているときには終了しています。そして,このトピックスも削除されているかもしれません。このトピックスはできるだけ最新のニュースを掲載したいと考えているからです。
常時ご覧いただける「目次」として,機関誌「応用心理学研究」の最近数号分の目次,認定「応用心理士」の認定者や申請方法など,学会の現在までの経過や現在の役員・委員会メンバー,ニュースレター《No2》《No3》《No4》の全文です。現在の当学会について概要がお分かりいただけると思います。
内容についてご意見ご質問などごさいましたら,制作担当者までご連絡ください。(トップページの担当者名の部分をクリックしていただければ,電子メール作成画面になりメールを送信することができます)。
現在このホームページは広報委員会で管理しています。ご覧頂いている皆様がより興味深くご覧いただけるような充実した内容になるように心掛けています。会員の皆様でご協力いただける方がおりましたらご連絡いただければと思います。
(東京富士大学教授)

応用心理士事務局より

岡村 一成

2002年度前期の資格認定申請受付期間は4月1日~5月末日です。
『資格申請の手引き (申請書類つき)』の必要な方は,現在「会員」と明記のうえ,
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場 3-8-1
東京富士大学内「応用心理士事務局」へお申し込みください。
(東京富士大学教授)

事務局より

萩野 七重

名簿作成に当たり多くの方から変更の返信はがきを頂きました。ありがとうございました。会員の皆様のご協力のおかげで,事務局から発送する郵便物は宛先不明で返送されるものが極めて少なく,千余通のうち10通程度です。
但し,ここからは事務局長の愚痴になりますが,会費の納入状況は思うにまかせません。年度末で,ほぼ85%というところです。事務局では,3年度分以上滞納された場合憾,常任理事会の承認を得て退会の措置をとらせていただいています。2月末に2002年度会費の振込用紙を送らせていただきました。振込用紙をなくされた時は喜んでお送り致しますので,事務局までご一報ください。
応用心理学会の活動は年々活発になってきています。来年度は,東京富士大学の大会時に第一回の研修会を開く計画が進んでいます。
また新たに,田中昌人先生を中心に本学会の倫理綱領作成のための委貫会も発足しました。既にご存知のように,シンガポールで開催される国際応用心理学会には,本学会として初めて,シンボジウムを行う計画が国際交流委員会によって着々と進められています。
種々の催し事や機関誌への投稿など,いろいろな機会に会員の皆様が気軽に参加してくださるようお願いいたします。

日本応用心理学会事務局
白梅学園短期大学心理学科
〒187-8570 東京都小平市小川町 1‐830
電話  042‐346‐5622
FAX 042‐349‐7373

〔発行〕
日本応用心理学会広報委員会
林 潔・神作 博・大坊 郁夫・浮谷 秀-