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2001年10月1日発刊

日本応用心理学会ニュースレター No.4

   コミュニケーションの広場

目   次
国際交流委員会からの報告 ……………………………………………… 長塚 康弘
《2002国際応用心理学会大会について》
日本応用心理学会提案シンポジウムテーマ
今世紀のカウンセリングの進む道 ……………………………………… 岸田 博
応用心理学の専門性 ……………………………………………………… 藤田 主一
大学便り(1) 日本大学 ……………………………………………… 長嶋 紀一
応用心理士事務局 ………………………………………………………… 岡村 一成
暴力についてのセビリア声明
本年度学会賞・奨励賞 …………………………………………………… 越河 六郎
名誉会員の御推挙について
事務局より


国際交流委員会からの報告
   2002国際応用心理学会大会について

国際交流委員会委員長 長塚 康弘

国際応用心理学会(IAAP)の第25回大会が 2002年7月7日から12日まで,シンガポ―ルで開催されます。このことはすでにニュースレター等でお知らせしてきた通りですが,大会まであと1年と間近に迫りました。個人的に関心を寄せられ,参加される会員の方もおられると思いますが,日本応用心理学会ではこの大会を我が国の応用心理学の展開を国際的にアピールする機会として捉え,学会としてのシンポジウムを提案するための準備を国際交流委員会が中心となって進めて参りました。会員の皆様からの提案をもとに委員会および常任理事会の審議を重ね,このたび成案を得るに至りました。先日の常任理事会で承認されましたのでここにお知らせいたします。
シンポジストは,広義の社会病理的問題究明のための研究に取り組み,問題解決への示唆,方向づけ,解決方策の提案等の研究業績のある人,学会賞受賞者等を基準として選考されました。

日本応用心理学会提案シンポジウムテーマ

日本における応用心理学の研究,実践および問題解決(策)の諸問題
  その過去,現在および将来について

(Problems of researches,practices and solutions in applied psychology in Japan: Past, present and future)

企画者 (Convenor)            長塚 康弘(新潟中央短期大学)
司会者 (Chair)              長塚 康弘(新潟中央短期大学)
話題提供者(Presentations)
カウンセリング/臨床心理学関係       福原 真知子(佛教大学教授)
健康心理学関係               佐々木 雄二(駒澤大学教授)
交通心理学関係         学会賞受賞:蓮花 一己(帝塚山大学教授) 
産業・組織心理学関係      学会賞受賞:向井 希宏(中京大学助教授) 
指定討論者 (Discussants : 2名の予定)
E.Nair, Ph.D.(Congress Organizing Chair)

シンポジウムに予定されている時間は2時間のようですので話題提供者は4人としましたが,これらの方々の領域外で外国に紹介すべき独創的な応用心理学研究がありましたらご紹介くださいますようお願いいたします。
なお個人研究発表の final deadline(abstract の締め切り)は10月30日です。申し込みは公式“website”(下記)を通して行わなければなりません(ファックス等によるものは受理されないようです)。念のため記しておきます。
http://www.icap2002.org
(新潟中央短期大学教授)

今世紀のカウンセリングの進む道

岸田 博

フロイトの精神分析学で幕を開けた20世紀の心理療法は治療であった。それがいろいろな形で発達し昨今は誠にいろいろなサイコセラピイ,カウンセリングが花盛りである。
私は,今世紀には治療活動はなくならないけれど,もはやそれは主軸に止まることはないだろうと考える。治療が主流になっていた時代は,それが要求されていたからであり,現在はそういう時代背景はないからである。今世紀のカウンセリング,セラピイの目的は治療から予防へと動き,更に発展,人柄の豊かさの追究へと動くと考えている。それは治療も予防も現象面の重視に止まってしまうことが多<,そこにはより積極的な人間関係への展望が見られないからである。 私はロジャーズのセラピーが見直されていいと思う。彼はひとりのセラピストとして今目の前にいる人に最高のアプローチをするにはどうすればいいかをいっも自問していたという。彼が大切にした“現在の重視,感情・情緒の重視・セラピーは援助関係” は再評価される価値を持っている。この考え方でセラピーをすれば人格の変容が起こり人間が豊かになることが彼の研究で判明している。彼に見るより積極的な人間関係の創り方は常に症状の背後にある人間に着目していたこと,人間の基盤である情の世界を最も大切にしたことで,それは今後ますます輝くであろう。 (龍谷大学教授)

応用心理学の専門性

藤田 主一

1995(平成7)年6月に本学会認定「応用心理士」が誕生して,今年で6年が経過した。この制度の発足は,本学会の長い歴史と多くの知恵が集結した輝かしい到達点であり,新しい歴史の第一歩である。今日までに170名を越える応用心理学の研究者や実践家がこの資格を得て,国内外のさまざまな分野で活躍している。
ところで近年,日本では心理学ブームの影響から新たに心理学を専門とする学部や学科の新設が続いている。需要と供給とのバランスということになるのだろうが,学問の道へ進もうとする高校生や大学生の期侍は大きい。一方,社会人向けの講座も盛況で,人間への興味や昨今の社会的事件に対する関心の高さから,その心理学的解明を求めて会場へ足を運ぶようである。
応用心理学は,こうした期待にどのように応えていくべきだろうか。先に研究と実践ということばを使ったが,高校生や大学生の研究志向で社会人が実践志向というわけではない将来の職業選択のひとつとして応用的領域(例えば心理臨床家)を考えた場合,人間への深い洞察と豊富な経験が求められる。応用心理学は,その両方の専門性を包含し供給する分野であろうと考える。「応用心理士」資格の取得は,まさに研究と突践とを成し得る者の証左であり,社会へ還元できる力となる。したがって各種の資格雑誌に紹介されているのも,本学会にとっては喜ばしいことである。
最俊に,応用心理学を押し進める者に求められることは,つねに社会との接点を見つめ倫理に外れないよう自己研鑚していく姿勢である。年次大会はもちろんであるが,さらなる専門性を向上させる研修の場にもすすんで参加する姿勢である。幅広い一般性からより深い専門性へ向けて,本学会の果たす役割は大きい。
(城西大学女子短期大学教授)

大学便り(1)
  日本大学心理学研究室

日本大学文理学部心理学科 主任教授 長嶋 紀一

日本大学文理学部心理学科は,1924(大正13) 年に日本大学法文学部心埋学専攻として開設され, 1958(昭和33)年文理学部の発足に伴い,文理学部心理学科として現在に至っています。「心理学研究室」としては,東京大学(1904年),京都大学 (1906年),東北大学(1922年)についで日本では 4番目,私学では最古の歴史を有しています。1999 (平成11)年には,75周年を迎え,記念式典を催し,「日本大学文理学部心理学科75周年のあゆみ)を刊行いたしました。
現在の定員は,学部120人,大学院博士前期課程 20人,博士後期課程3人で,約600人の大世帯になっています。専任教員12人,助手3人,副手2 人,非常勤講師約50人で教育・研究指導に対応しています。専任教員の専攻領域は現時点では,応用領域よりも基礎領域の方が多い構成になっています。 2000(平成12)年には,カリキュラムの改定に伴い,実験・実習・演習など実験講座特有の教科目を充実すると同時に,時代の要請を考慮し,応用領域の教科目についても配慮した内容に構成したところです。
各専任教員は,それぞれの専攻分野でユニークな研究活動を展開していますが,ほとんどが同窓生ということもあり,まとまりの良い研究と集団であり,研究室であると自認しています。なお,大学院文学研究科博士前期課程心理学専攻では,2002(平成 14)年度より,財団法人日本臨床心理士資格認定協会の第2種指定校に認定され,第1種指定校の認定を受けるべく準備中です。
(日本大学教授)

応用心理士事務局より

岡村 一成

2001年8月現在,本学会認定「応用心理士」の資格認定者は182名となりました。会員の皆様の中には,一定の業績をお持ちなのに,まだ資格認定をお受けになっていらっしゃらない方も見受けられます。この資格が社会的に承認されるためには,一定の業績をお持ちの多くの会員が資格を取得されることにあると思います。資格要件の調っていらっしゃる会員の方は,早めに資格認定をお受けくださいますようお願い申し上げます。なお,来年度発行の会員名簿には「応用心理士」資格認定者の記載もなされることになっております。
「応用心理士」の資格要件は,基礎条件として,本学会に正会員として入会後満2年を経過し,現在会員であることが必要です。また,次の(1)から(3)のいずれか1つに該当し,応用心理学の専門職としての資質があると認められた人に認定されます。
(1)心理学専攻またはこれに準ずる学科を卒業した人。
(2)『応用心理学研究』に1件以上の研究論文を発表,または年次大会において2件以上の研究発表をした人。
(3)応用心理学と関係があると認めた専門職で,3年以上の経験を有する人。
(詳細については『資格申請の手引き』をご参照ください。)
今年度後期の資格認定申請関係の日程は次のとおりです。
1)申請受付期間は10月1日~11月末日
2)審査結果通知は12月下旬
3)認定料納入日は1 月下旬まで
4)認定証の送付は2月下旬の予定
(富士短期大学)

暴力についてのセビリア声明

前文
私たちはそれぞれの専門分野から,私たち人間という種のもっとも危険で破壊的な活動・暴カと戦争の問題に取り組むことは,私たちの責任であると固く信じます。また,科学は人間の文化の産物であり,最終的な解答を出しているわけでもなく,すべてを明らかにしているわけでもない事実を知っています。さらに,セビリアの市当局とスペインのユネスコ代表のご支持に厚く感謝します。
私たち署名者は,世界中の国々から訪れた関連諸科学の学者です。ここに結集し,つぎのような「暴力についての声明」に到達しました。このなかで私たちは,暴力と戦争を正当化するために,私たちの分野の何人かの学者にさえ用いられてきた,たくさんのいわゆる唯物学的発見に桃戦します。
このいわゆる発見は,私たちの時代を包む悲観論の雰囲気を助長しています。したがって,私たちはこれらの誤った見解について注意深く検討し,これを公然と拒否することこそ,国際平和年にふさわしい有意義な寄与であると考えます。
暴力と戦争を正当化するために行われる科学の学説と資料の誤用は,いまにはじまったことではなく,近代科学の出現以来のことです。たとえば,進化論は戦争だけでなく,人種絶滅,植民地主義,および弱者の抑圧を正当化するために用いられてきました。
私たらは私たちの立場を五つの命題のかたちで表明します。私たちは暴力と戦争について,私たちの専門分野の視点からみのり豊かに取り組むことのできる問題が,これ以外にまだたくさんあることを知っています。しかし,私たちはここでは,私たちがもっとも重要な第一歩と考えるものだけに作業を限定します。

本年度学会賞・奨励賞

学会賞・奨励賞選考委員会委員長 越河 太郎

日本応用心理学会2001年度学会賞・奨励賞は,次の方が受賞されました。
〔学会賞〕 足立 浩平氏(甲子園大学人間文化学部助教授)
該当主要業績「多変量解祈による虚偽検出検査の自動判定」応用心理学研究 No.18, 55‐63, 1993 ほか。
〔奨励賞〕 北川 公路氏(駒澤大学文学部助手)
該当主要業績「セルフコントロールによる加齢の効果」応用心理学研究 No.23, 1‐8, 1998 ほか。
なお,賞候補者の推薦は理事および名誉会員の方々にお願いしておりますが,次年度もよろしくお願いいたします。
(松陰女子大学教授)

名誉会員の御推挙について

以下の方々が第68回大会において,名誉会員に御推挙されました。
岸田 博氏 駒崎 勉氏 高橋たまき氏 平野 馨氏 福原真知子氏 丸山 欣哉氏 (五十音順)

事務局よりお知らせ

大会について
2002年度(第69回)大会日程は次の通りです。
期日:2002年9月7日(土)・8日(日)
場所:宮士短期大学(東京都新宿区下落合1-7-7)

2003年度(第70回)大会開催校が次のように決まりました。
場所:流通科学大学(神戸市西区学園西町3-1)