応用心理学とは
人は人の「こころ」について大きな関心を寄せています。
昔から「こころ」とはなにか,「精神」とはなんだろう……という議論が盛んに行なわれていました。心理学の歴史をたどると,人間が地球上に現れたときにまでさかのぼってしまうほどです。
近年,若い人たちの間で,「心理学」が大変ブームになっています。マスコミでも心理学に関したテーマがよく取り上げられています。好奇心の強い若者たちが「こころ」というテーマに深い関心を寄せていることがわかります。しかし,巷にはこころを探索するゲーム感覚の本や,占い的な興味本位のものが多く氾濫し,科学としての心理学に対する誤解を生じさせています。また,一般に心理学というと,カウンセリングなど心理臨床関係の研究や実践と思われるなど,心理学に対する関心に偏りもみられています。
現代の心理学はその研究領域もきわめて広く,人間行動のあるところすべて心理学の研究分野であるというほど,私たちの生活に密着した学問になっています。そして,心理学の研究は社会の具体的な問題解決に大きな役割を担っているのです。
我が国の応用心理学的研究活動は1920年頃からすでに芽生え始めておりましたが,心理学の学会は「日本心理學會」に限られていて,いわゆる実験・基礎の研究が中心でした。このような中で,心理学の研究が社会の具体的な問題解決に資することを目指し,広い専門領域の研究者を糾合して1936年に設立されたのが「日本應用心理學會」でした。
第二次世界大戦中(1941年~1945年)はその活動を停滞していましたが,戦後1946年(昭和21年)に復興第1回大会が開催され,以来本格的な学会活動が展開されてきました。
学会の復興当初は,その組織の中に,教育心理部会・臨床心理部会・産業心理部会・犯罪心理部会・相談部会など多岐にわたる部会をもっていましたが,やがて心理学が多くの分野に分化して発展するようになり,これらの部会はそれぞれ1つの学会として独立していきました。今日,心理学関連の学会はゆうに40を超え,心理学の研究は細分化の傾向を強めつつあります。
このような状況にあっても,日本応用心理学会は,今もさまざまな領域の会員を擁し,学会の志と長い伝統を大切に実績をあげており,心理学界全体の発展にとってその役割はきわめて大きいものと思われます。