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トピックス

退任のご挨拶

森下 高治(もりした たかはる)
帝塚山大学 心理福祉学部

 公選になって私が理事長に就任しましたのが,3年前の2009年4月1日でした。公選による初代理事長の岡村一成先生は二期にわたり基礎を築いて来られました。その後を受けての大役でした。振り返りますと,公選前の2003年に70回大会をお引き受けした関係で2002年の秋から理事長を拝命したこともあり,正確には3年と6カ月務めさせて戴きました。
 はじめにこの3年,会員の皆様,理事,常任理事の皆様に支えられ,理事長職を何とかこなすことが出来,御礼とともに感謝を申し上げます。
 この度の役員選挙は,4月から森下が本務校をも含む複数の役職に就任することを受け,常任理事を辞退させて戴きました。
 新理事長には私を全面的に支えて下さっていた経験豊かな副理事長の藤田主一先生が第3代の理事長に選ばれました。
 さて,在任期間のなかでの大きな出来事は,“2011年3月11日(金)”,未曾有の巨大地震が発生したことです。大震災からまもなく1年2ヶ月を迎えようとしています。地震に加えて,原発災害による放射能の被爆,除染問題が福島を中心に人々の生活に大きな影響を与えていて,一日でも早い原発からの不安,岩手,宮城を中心とした被災地域では安心できる生活が求められます。
 震災以降,福島を訪れた時に50代の男性から,地震と原発災害さえなければ,本当に住みよい町であったと言う言葉が私自身,今も耳から離れません。
そのようななか社会との接点が多い研究が殆どの応用心理学徒は,自ら取り組んだ研究成果をいつも社会に還元する必要があります。
昨年の総会時に申し上げましたが,学会の財政は厳しく緊縮財政の予算を組みましたが,より小さな執行体制を取りながら,逆により大きな魅力ある活動を目指し,必要に応じ財政出動を視野に運営が進むかと思います。
 学会の財政と運営について,常任理事会では理事長提案の『日本応用心理学会の更なる発展を考える会』と称する理事長諮問委員会を設置し検討課題について,幅広く協議をして参りました。この3月には最終報告書が藤田先生を中心にまとめられました。会員名簿の作成方針,メールニュースの新設,常任理事の定員,大会での優秀論文の表彰など既に一部は実施されています。
 学会の企画委員会では,毎年公開シンポジウムを開催しタイムナリーなテーマを取り上げ,会員はじめ地域住民,学生,院生の聴講も含め前回の2011年は日本体育大学で,一昨年は駒澤大学,2009年は東京富士大学で多くの参加者が見え盛会でした。また,若手研究者の支援制度も定着し,学会あげて若手研究者の育成に少しでも寄与できたかと思います。
 また,この3年若手研究者からの機関誌応用心理学研究の投稿が大幅に増え,喜ばしい現象が続いていますが,会員の皆様には査読の遅れでご迷惑をおかけ致しました。この点につきましては深くお詫び申し上げます。
 幸い新理事長の藤田主一先生は,国際応用心理学会議の英文特集号をはじめ,これまで編集に関してはいろんな立場で関わって来られましたので,新しい機関誌編集委員会体制が構築され査読のスピードアップ化が図られるものと思います。
 次に,国際交流では2010年にメルボルンで開催された国際応用心理学会議で日本応用心理学会のシンポジウムを委員長の内藤先生を中心に,蓮花教授とP.Ch.ボイス教授の企画によりテーマとして”Measures to Aging in Japan” を取り上げました。
広報については,委員長の藤森先生を中心に『応用心理学のクロスロード』が2010年の6月に創刊され,会員の皆様の活躍ぶりが紹介され,社会の中の最前線の研究の動きも広報により広く行き渡り情報発信として寄与できたものと思います。このクロスロードに加え,今後は新体制のもとホームページを通じた媒体,Webによるニュースレターの配信,さらに会員同士の情報の交換も出来るよう進めて戴いています。
 さらに,応用心理士についてはより有用な資格となるように研修も含めた強化案が模索されるかと思います。九州大学の76回大会,京都大学での77回大会,信州大学での第78回大会は,若年,中,高,熟年の会員はもちろんのこと,非会員の方を含め本当に幅広い皆様の参加で大会が盛り上がりました。
最後に,会員皆様のご健康とご多幸をお祈り致しますとともに,これまでのご支援・ご協力に深謝致します。加えて,日本応用心理学会の伝統のあたたかい本会の雰囲気を大切に,更なる学会の発展を祈念申し上げます。

第78回大会 優秀大会発表賞受賞者

日本応用心理学会第78回大会「優秀大会発表賞」

日本応用心理学会    
優秀大会発表賞選考委員会

 先日の常任理事会で,第78回大会における優秀大会発表賞受賞の選考をおこない,以下の発表が受賞となりました。おめでとうございます。

『血液型性格学』は信頼できるか(第28報)1,2,3
 ○浮谷 秀一(東京富士大学)‥‥ 1 血液型と県民性について
 ○藤田 主一(日本体育大学)‥‥ 2 血液型と民族性について
 ○大村 政男(日本大学)  ‥‥ 3 古川竹二の「団体気質」の問題点を衝く
繰り返される自然災害と高齢者のPTSD
    2000年三宅島雄山噴火から9年後の坪田地区住民への実態調査から
 ○大森 哲至・藤森 立男・松下 陽一郎
  (横浜国立大学大学院国際社会学研究科)
人的資源管理施策と個人プロアクティブ行動
    縦断的データに対するSEMを用いた媒介モデルの検討
 ○竹内 倫和(学習院大学経済学部)
  太田 さつき・髙石 光一・岡村 一成(東京富士大学経営学部)
江戸時代の犯罪者プロファイリング  長崎犯科帳を使用した殺人犯罪情報分析
 ○田山 允俊・永瀨 彩・谷本 郁子(関西国際大学大学院人間行動学研究科)
  川瀧 節子(関西国際大学)
  桐生 正幸(関西国際大学大学院)
聞き手と話し手の笑顔度測定における相互影響過程の移動相互相関分析
 ○安原 久美子(帝塚山大学大学院人文科学研究科)

[敬称略,○印は責任発表者,所属は受賞当時,順不同]

東日本大震災に関する緊急メッセージ

理事長 森下 高治(帝塚山大学)

 ”2011年3月11日(金)”,未曾有の巨大地震が発生,大震災から7ヶ月を経過しました。
10月6日発表(警察庁)によると今なお不明者が3,926人,死者は15,821人を数えている。地震に加えて,原発災害による放射能の被爆,除染問題が福島を中心に人々の生活に大きな影響を与えている。一日でも早い原発からの不安,岩手,宮城を中心とした被災地域では安心できる生活が求められる。
震災以降,福島を訪れた時に50代の男性から,地震と原発災害さえなければ,本当に住みよい町であったと言う言葉が私自身,今も耳から離れない。

 丁度一ヶ月前の初秋の9月10日と11日に,松本の信州大学人文学部で日本応用心理学会第78回大会(内藤哲雄大会委員長)が開催された。
二日目の11日に特別講演として”東日本大震災から学ぶ  応用心理学への期待を込めて ”のテーマで社会安全研究所の首藤由紀氏が14の新たな課題を提起された。14の課題全ては応用心理学徒に求められたものである。また,自主企画ワークショップにおいてもジャパンEAPシステムズの大林氏と明治学院大学の井上教授による「東日本大震災における勤労者のこころの支援を考える」が企画された。また,ポスター発表では災害に関して横浜国立大学大学院の大森氏,藤森教授,松下氏の「繰り返される自然災害と高齢者のPTSD-2000年三宅島雄山噴火から9年後の実態調査」が発表され,大震災の今後の問題として注目を集めた。

 そのようななか学会の役割として,信州大学の第78回大会総会で大震災の実践,調査教育研究活動をスムーズに行うために助成金に対するカンパ(義援金)をお願いしたところ57,630円の寄付があり,端数分を補い60,000円の基金をもとに今年度予備費の一部を割り当て1テーマ最高10万円の助成金でもって3~4件のテーマに助成を行うことになりました。募金をされた皆様には,この場をお借りし御礼を申し上げます。
詳しくは,日本応用心理学会東日本大震災の実践,調査教育研究活動に対する助成について(募集)をご覧ください。
今回の助成は,被災地域への義援金の直接支援ではありませんが,私ども応用心理学会の会員が個人レベル,あるいは学会を通して危機的状況に対して少しでも動くことが出来ればと考えます。悲しみを共有することは完全には出来なくても,専門の立場からリスク管理,こころのケア,交通,看護・保健,医療活動,教育,福祉,ボランテイア活動に会員皆様が積極的に関わってくださることが,学会としての務めかと思います。肝心なことは,日本応用心理学会が,社会に貢献できることです。そのために,学会員が被災者の方々に援助の手を差しのべてほしいと切に希望致します。
問い合わせは,日本応用心理学会メールアドレス:jaap-post(at)bunken.co.jpまで。
※[(at)をアットマークに換えてご連絡ください]

 最後に,日本応用心理学会の公開シンポジウムが来る11月12日(土)に日本体育大学世田谷キャンパスで開催されます。
 テーマは,“まさか!”の応用心理学 ― 災害時はこうする ― で企画は麻布大学の田之内教授,司会は災害研究の第一人者横浜国立大学の藤森教授,シンポジストして第一線で活躍の心理学者(日本大学の伊坂准教授,東京富士大学の深澤教授,同志社大学の中谷内教授)を予定しています。奮って参加をしてくださればと思う次第です。
問い合わせは,tanouchi(at)azabu-u.ac.jp(麻布大学 田之内)まで。
※[(at)をアットマークに換えてご連絡ください]


 当学会の常任理事であり広報委員長の藤森立男先生(横浜国立大学教授)が中心なって作成された「子どもたちの心のケア」(PDF版)を公開いたします。ご自由にご覧いただきご活用ください。なお,現地の要請に応じて日本応用心理学会としても震災対策に取り組んで参りたいと思います。

第77回大会 優秀大会発表賞受賞者

日本応用心理学会第77回大会「優秀大会発表賞」

日本応用心理学会    
優秀大会発表賞選考委員会

 日本応用心理学会では,本年度から年次大会において優れた研究発表を行った研究者および研究発表を表彰することになりました。
 先日の常任理事会で,第77回大会における優秀大会発表賞受賞の選考をおこない,以下の発表が受賞となりました。おめでとうございます。

虚偽検出検査における質問および返答の影響  末梢皮膚血流を指標とした分析
 ○石岡 綾香・小野 洋平(駒澤大学大学院人文科学研究科)
  軽部 幸浩・谷口 泰富(駒澤大学文学部)
小児専門病院放射線科におけるヒューマンエラーの事例分析
    子どもの特性とエラーとの関連
 ○石舘 美弥子(湘南短期大学看護学科)
  五十嵐 博(群馬県立県民健康科学大学診療放射線学部)
臨地実習で学習困難を経験した時の看護学生のPAC 分析
 ○那須 美奈子(新潟県立看護大学大学院看護学研究科)
  堀 良子 (新潟県立看護大学基礎看護学)
看護学生の事故防止教育の検討  患者の日常生活動作のイメージと危険察知
 ○西土 泉・佐野 薫・玉木 ミヨ子・今野 葉月・蒲生 澄美子・関口 恵子・宮崎 素子
  (埼玉医科大学短期大学)

[敬称略,○印は責任発表者,所属は受賞当時,順不同]

日本応用心理学会誕生の歴史と
開かれた日本応用心理学会のこれから!

理事長 森下 高治(もりした たかはる)
帝塚山大学 心理福祉学部

 2011年も10ヶ月が過ぎ,大震災以降私たちが住む社会は震災で原発事故が発生し,これまで経験したことがない環境汚染や社会・経済の低迷が続いている。復興にほんの少しは踏み出しつつあるが,未来の子どもたちに大きな課題を背負わしている現状から確実に希望の光が差すことを祈りたい。そのようななか,いまこそ応用心理学の社会に対しての貢献と使命が問われている。この度,ホームページが一新されるのを機会に多くの応用心理学徒と未来に向けた応用心理学,学会の今後を考えてみる。
 日本応用心理学会は,日本心理学会とともにわが国おいて第二次世界大戦前,期間中,戦後半世紀を経て,その間心理学の成立基盤に根本的な変化を経験し,影響を受けつつ継続してきた数少ない学会の一つである。
1999年に結成された日本心理学諸学会連合の組織には,現在39団体が加入している。
多くの心理系学会のうち日本心理学会に次いで歴史的に古い,伝統のある学会である。
 人間の幸せを創出する学問として心理学,応用心理学が位置づけられるが,原理・原則の発見をする基礎心理学,理論心理学に対峙する形で応用心理学がある。応用心理学は,問題解決のための学問であり,応用心理学-Applied Psychologyを通じ原理・原則の発現を目指すことからまさに実践心理学-Practical Psychologyであると言える。
本年信州大学(内藤哲雄教授)で開催された大会は,78回を数えた。2012年の79回大会(北星学園大学 濱保久教授)は札幌にて開催,再来年2013年には80回大会(日本体育大学 藤田主一教授)を迎える。
 1998年に日本応用心理学会史が刊行された。副題は-学会活動の変遷 回顧と展望-がつけられていた。加えて本年2011年9月14日に日本心理学会第75回大会(日本大学,厳島行雄大会委員長)に日本応用心理学会は,後述の通り開催校である日本大学と関係が深いこともあり,学会あげて『応用心理学の発展と社会への貢献』 を大会シンポジウムテーマに取り上げた。本学会副理事長の藤田教授がシンポジストして”応用心理学と日本応用心理学会の発展”と題して話題提供をされ学会の歴史を纏められた。ここでは,学会史とシンポジウムで取り上げられた一部を紹介する。
 わが国の応用心理学的研究活動は,1920年頃に一層盛んになったとされ,1927年に各種テストを検討するための研究会が関西で生まれ,「応用心理学会」と呼ばれていた。後の関西応用心理学会,現在の関西心理学会である。
一方,東京近辺在住の心理学者らが「応用心理学会」の第1回会合を1931年に東京帝国大学で開催した。その後,第二次世界大戦までの間,関西と関東で定期的に「応用心理学会」,また隔年で「応用心理学会合同大会」が開催された。戦時中の1940年に応用心理学会暫定規則が発表された。1941年には心理学会会則が出来,既存の国内の心理系学会が一つに纏められた。
 戦後まもない1946年に「応用心理学会復興第一回大会」が日本大学(渡邊徹教授)で開催,1957年までは年二回行われていた。今日,39もある心理学関係学会名をみると研究領域,分野は極めて広いが,なかでも応用心理学は社会の具体的な問題解決に大きな役割を担っている。今世紀の1/4世紀のなかで細分化された心理学のさまざまな領域の統合・融合が必要ではないかと思う。
 最近,心理学の近接領域である脳神経科学の分野ではいろんなことが分かってきた。また,応用心理学は認知科学の問題ともかかわりが深い。しかも,昨今の社会経済的環境,地球環境の問題は,個人を超えるところにあり,そこには学際的な問題,他領域研究者とのリエゾン(連携 liaison)の問題がある。このようなことから心理学の近接領域,また,相当遠い位置にある領域からの参入もあることは自然の流れである。
 実際,社会,交通,看護,産業,臨床,医療,教育,福祉,犯罪領域以外に工学,情報系などさまざまな分野の研究者の入会が一層望まれる。私たちは,なによりも先達が築いて来られた応用心理学を学び,これからの応用心理学を考え,他分野,他領域の研究者との共同作業を通じ,社会に貢献できる学問にさらに育てていきたいと考える次第である。


 藤田先生以外に話題提供者は,応用心理学の第一人者である井上孝代教授(明治学院大学)が「基礎心理学と応用心理学の協同による心理学教育の試み」を,臼井伸之介教授(大阪大学)が「安全研究における応用心理学の役割」と題して話しをされた。司会は,大坊郁夫教授(大阪大学)が労をとられ,指定討論に田之内厚三教授(麻布大学)と厳島教授が役割を担われた。

新体制の発足にあたって

理事長 岡村 一成(おかむら かずなり)
東京富士大学 経営学部

 会員の皆様には,各方面でご活躍のこととお慶び申し上げます。
 さて,このたびの役員選挙により,今期も理事長を務めさせていただくことになりました。伝統ある日本応用心理学会の理事長として2期連続で選任されましたことは,身に余る光栄であるとともに,責任の重大さを痛感しております。新役員の先生方はじめ,会員の皆様方のお力添えを得ながら,責任を果たして参りたいと思いますので,よろしくご協力のほどお願い申し上げます。
 今期の役員体制につきましては,後のページに示しておりますが,常任理事数のスリム化により,各委員会では理事の先生方のご協力をいただいております。常任理事会では各委員会からの積極的なご提言を反映させながら審議し,学会の運営を図っていきたいと考えております。各委員会とも,それぞれ課題を抱え検討しております。今後,会員の皆様にご満足いただけるような様々なご提案ができると思います。
 ところで,総会でもお話申し上げましたが,本学会は,1933年(昭和8年)に設立され,第二次世界大戦中は活動を停滞しておりましたが,戦後1946年(昭和21年)に,復興第1回大会が日本大学で開催されました。この大会が基準となって,現在の第73回へとつながっています。復興後の大会は,年2回開催されておりましたが,現在のように大会を年1回開催するようになりましたのは,1958年(昭和33年)の第25回大会からです。それで,本年はこの復興第1回大会からみて,60周年の節目を迎えました。大変おめでたいことでございます。
 そこで,この復興60周年を記念して,丸善株式会社出版事業部から,日本応用心理学会編『応用心理学事典』を刊行することになりました。本学会の多くの会員の方々にご執筆いただき,現在進行中です。2007年1月に発行される予定ですのでご期待ください。
 それでは,会員の皆様のご活躍と日本応用心理学会の発展を祈ってご挨拶といたします。

理事長に就任して

理事長 岡村 一成(おかむら かずなり)
東京富士大学 経営学部

 本学会では設立以来,理事長(会長)は大会当番機関の代表者(大会準備委員長)が,その任にあたって参りましたが,この度の会則改正で,理事長の任期は3年とし,常任理事の互選により選出されることになりました。この最初の理事長として私が選出されましたことは,身に余る光栄であるとともに,大変戸惑を感じている次第です。この重大な任務を全う致すには,役員の先生方はじめ,会員の皆様方のお力添えがなければ,到底成し遂げられるものではございません。ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
 さて,伝統ある本学会の良さは,特定分野に偏らない,幅広い領域の研究者や実務家が家庭的雰囲気の中で,自由に議論し,交流が図られていることにあると思っております。私はこの良き伝統を引継ぎ,さらなる発展を目指したいと願っております。それには若手研究者が魅力を感じ,積極的に参加できる場(環境)が必要です。他学会で行われている良いところを見習いながら,本学会独自の若手研究者支援の施策を考え,推進していきたいと思っています。もちろん,核となる熟年会員の皆様方のご協力がなければ成り立ちません。よろしくご指導のほどお願い申し上げます。
 また,私は1995年から本学会の活動を活性化させるために導入された,認定「応用心理士」制度をもっと活用する必要があると考えております。私はこの制度の発足当初からかかわった関係で思いがあります。「応用心理士」の資格認定は,個人や集団の心理学的指導に努力している会員に,応用心理学の専門職としての資質があることを認め,社会的地位を承認するための一助とすることを目的に制定されたものです。同時に学会活動の活性化として,資格認定を目指し,年次大会の研究発表や機関誌への投稿論文の増加,研修会開催により会員のレベルアップなどを図る。また,認定料の収入を機関誌発行回数の増加,学会賞・奨励賞の創設,年次大会開催補助費の増額,若手研究者支援などに活用しようと考えられていました。現在222名の会員が「応用心理士」の認定を受けておりますが,社会的に承認されるためには,社会で活躍されている多くの会員が取得されることにあります。資格条件を満たしていながら,まだ「応用心理士」資格を取得されていない会員の皆様には,ぜひ取得していただきたくお願い申し上げる次第です。そして,応用心理士の認定料収入を若手研究者の支援や学会活性化のために,有効に活用していきたいと願っております。
 それから,昨年から日本応用心理学会倫理綱領の作成を精力的に進めていただいておりましたが,本年の大会で審議承認され,制定される運びとなりました。倫理綱領作成委員会発足時の田中昌人委員長,その後を引継ぎ,まとめて完成させてくださいました藤田主一委員長はじめ,ご尽力いただきました委員の先生方に心から御礼申し上げます。本学会会員は,応用心理学に関係するあらゆる分野のルールを遵守し,すべての人びとの基本的人権および尊厳を認め,諸活動の対象となる人びとの生命・人権・人種等を尊重し,もってわが国の文化・福祉・平和の向上発展に貢献しなければなりません(倫理綱領前文抜粋)。会員の皆様は制定されました「日本応用心理学会倫理綱領」を遵守され,研究者としての倫理観を高めてくださいますようお願いいたします。
 以上,理事長就任にあたり,考えの一端を述べ,ご挨拶に代えさせていただきます。