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大会委員会企画シンポジウムA2

街中での異性関係開始
その危険性も考慮に入れて

日 時:8月26日(土) 13:45 ~ 14:15
場 所:立正大学 品川キャンパス 11号館5階(1151教室)
企画者:日本応用心理学会第84回大会委員会
司 会:古屋 健(大会委員長)

仲嶺 真

(筑波大学人間系,日本学術振興会特別研究員)
キーワード:異性関係,関係開始,意思決定,社会的ネットワーク


【研究の背景】
 異性との友人・恋人関係(異性関係)は,個人の適応や発達にとって重要である(Agnew et al., 1998;Havighurst, 1953)。しかし,異性関係は任意性が高いため(松井, 2010),自らの意思で関係を開始しなければならない。そのため,異性関係開始(どのような相手と関係を開始するか)は,当事者にとって重要な問題となる。従来の研究では,個人の既存の社会的ネットワーク(学校や職場など; 以下,社会的ネットワーク内)での異性関係開始が多かったことを背景に(岩澤・三田, 2005),社会的ネットワーク内における異性関係開始を検討していた。しかし,近年の急激な社会変化によって,既存の社会的ネットワークを超えて(以下,社会的ネットワーク外)異性関係が開始することもある(Bredow et al., 2008)。それにもかかわらず,この領域の検討は十分ではなく,国内に至ってはほとんど検討されていない。社会的ネットワーク外では,社会的ネットワーク内で暗黙の内に想定されていると考えられる類似性(同じ学校に所属しているため価値観が似ているなど)や,今後の関係の予期などが存在しないため,両者では異性関係開始プロセスが異なると考えられる。そのため,異性関係開始に関する既存の理論を拡張するには,社会的ネットワーク外の異性関係開始を検討する必要がある。そこで,本研究では,社会的ネットワーク外の異性関係開始を検討するにあたり,街中での声かけに着目した。

【受賞研究の概要】
 先行研究(浜野, 2004; 坂口, 2009)においては「ナンパ」として,街中での声かけの経験について尋ねた調査はいくつか存在するが,街中での声かけをどちらかというと性的な関係を目指した行動と捉えており,異性関係開始のきっかけと捉えている研究は本邦においては存在しなかった。そこで,本研究では,性的な目的もそうでない目的も含めて,街中での声かけが日常的にどの程度生じているのか,実際に異性関係開始を目的に話しかけている人は存在するのかを検討することを第一の目的とした。また,第二の目的として,街中での声かけをどのように捉えているのか(不快度)について検討した。加えて,街中で声をかけた,あるいは,声をかけられた後,どのようなコミュニケーションを行い,会話が進展していくのかについて検討することを第三の目的とした。なお,異性関係を築くためには,まず男女が会話する必要があると考え,女性が声をかけてきた男性と会話するまでを主な検討対象とし,実際に異性関係を築いたかどうかは本研究では扱わなかった。女子学生183名,男子学生215名を対象に,街中での声かけ経験についての調査を実施した(分析対象は女子学生182名,男子学生214名)。女子学生には,街中で初対面の男性から声をかけられた経験を尋ね,男子学生には街中で初対面の女性に声をかけた経験を尋ねた。上記の三つの目的に沿って,調査の結果を以下に概括する。第一に,街中での声かけの経験率に関して,女子学生の約8割は,街中で初対面の男性から声をかけられた経験がある一方,街中で初対面の女性に声をかけた経験のある男子学生は約1割であった。その後に行った大学生に対する調査(仲嶺, 2015; 仲嶺・松井, 2014)においても同様の経験率であったことから,女子学生にとっては,街中での声かけは日常的に生じていると示唆される。また,声をかけた経験のある男子学生に対して,話しかけた目的を尋ねたところ(n=24),「親密性希求(仲良くなりたかったなど)」が多く挙げられた。このことから,街中での声かけには,異性関係開始を目的とした側面が存在することが確認された。第二に,街中での声かけへの態度に関して,女子学生も男子学生も,声かけに関してどちらかというと不快に感じており,女子学生は男性学生よりも,より不快に感じていた。第三に,会話の進展に関して,四つのパターンが存在することが示された。それらはさらに,「会話しない」パターンと「会話する」パターンに大別できた。男性から「ねえねえ」などと「呼びかけ」られたり,「何してるの?」と「現状確認」されたり,「ご飯行こう」などといきなり「誘い」を受けると,女性は声をかけてきた男性と「会話しない」。他方,男性から「学生ですか」などと「個人情報への質問」をされたり,「これ落としませんでしたか?」などと「カモフラージュ」で声をかけられたりした場合,女性は男性と「会話する」。加えて,「個人情報への質問」で話しかけられていた場合は,その後,「表面的会話(適当に相づちするなど)」しかしないため,男性からの誘い(食事に行こうなど)を受けても女性はその誘いに応じない一方,「カモフラージュ」で話しかけられていた場合は,その後,「個人情報(年齢など)」や「予定の確認(これからどこ行くの?など)」などのより私的な会話をしやすいため,男性から誘いに応じやすいことが示された。以上をまとめると,男女ともに街中での声かけには否定的な態度を有している一方,街中での声かけに関する経験率には男女で非対称性がみられた。また,会話へと繋がりやすい声のかけ方や,男性からの誘いに応じやすくなる会話の進展過程が存在することも示された。

【その後の関連研究】
 会話の進展に関する結果を確認してみると,男性に対する女性の意図推測が重要であることが示唆された。すなわち,「カモフラージュ」で始まる会話の進展の場合に,女性が男性からの誘いに応じやすい理由として,「カモフラージュ」で話しかけられた場合,女性は男性の意図に悪意はないと判断しやすいためと考えられた。そのため,その後の研究では,女性の意思決定に着目し,研究を実施した。第二研究(仲嶺, 2015)では,街中で男性から声をかけられたとき,女性がどのような内容について判断しているか,それらの判断と男性との会話の有無との関連を検討した。第三研究(仲嶺, 印刷中)では,情報モニタリング法(松井, 1990)を用いて,街中で初対面の男性から声をかけられた女性の意思決定過程を検討した。以上の研究結果を概括すると,男性から声をかけられたとき,女性は2段階の処理をしていることが示唆された(詳細については当日に紹介予定)。

【展望】
 声をかけられた際の意思決定は本来であれば瞬間的であろう。しかし,これまでの研究は,その点を扱えていない。今後は瞬間的な意思決定について検討するとともに,その前提となっている「本当に意思決定しているのか」についても検討してきたいと考えている。


  • 大会委員会企画シンポジウムA1:学会賞(論文賞) 13:15 ~ 13:45
  • 大会委員会企画シンポジウムA3:齊藤勇記念出版賞 14:15 ~ 14:45
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