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大会委員会企画シンポジウムA1

化粧が対人印象に及ぼす影響
顔形態とメイクの差異による印象操作の実証的研究

日 時:8月26日(土) 13:15 ~ 14:15
場 所:立正大学 品川キャンパス 11号館5階(1151教室)
企画者:日本応用心理学会第84回大会委員会
司 会:古屋 健(大会委員長)

九島 紀子

(立正大学大学院心理学研究科)
キーワード:化粧,顔形態,対人印象,成熟性,性別


【研究の背景】
 本研究は,第一筆者が長年美容業に携わってきている中で,外見に関する専門家が経験と感覚で行っている技術(メイクやヘアスタイリング)の言語化の必要性を感じたことから生まれました。周知のとおり,対人関係には,人々の外見が大きく影響しています。特に第一印象は,たった数秒で決定づけられ,その印象はなかなか変えることができないものとされています。美容業界では,お客様の第一印象・対人関係をも考慮した外見の提案(施術)が必要であり,そのためにはお客様との共通言語・認識を持つことが必要であると考えられています。例えば,「かわいい」というのはどのような顔なのか,一定の基準を持つためにはどのようにすればいいのか。そこから,基準顔の作成の試みが始まりました。

【研究の概要】
 本研究は,化粧と顔形態が対人印象に及ぼす影響について研究することを目的とした。女性の顔の基準とメイクの基準として,成熟性と性的二型性の2つの次元を取り上げた。提示刺激は,イラストを用いて独自に作成した。
 予備研究では,原型顔の作成と原型顔を基に,顔パーツを移動し,成熟・性別特徴の異なる4つの顔を作成した。作成された5つの顔刺激について,大学生159名(男性48名,女性111名,M=19.63歳・SD=1.45)を対象に,形態評定,印象評定,関係性希望評定の質問紙調査を行った。その結果,作成された5つの顔形態は,仮定された成熟軸・性別軸に沿って,印象が形成されていることが確認された。
 研究1では,(1)予備研究で作成された原型顔に,成熟・性別の特徴を踏まえ4種類のメイクの基準を作成した。その作成したメイク顔刺激の妥当性を検討するために,大学生158名(男性55名,女性103名,M=19.43・SD=1.92)を対象に,集合形式の質問紙調査を実施した。その結果,4種類のメイク顔刺激は,刺激としての妥当性が認められた。
 (2)そして,その妥当性の認められた4種類のメイク顔刺激について,大学生163名(男性48名,女性114名,M=19.46歳・SD=.88)を対象に,形態評定,印象評定,関係性希望評定の質問紙調査を行った。その結果,メイクの差異のみでその特徴を踏まえた印象を与えることが明らかにされた。
 研究2では,予備研究で作成された顔形態と研究1で作成されたメイクを組み合わせて,16種類の顔刺激を作成した。それらについて,大学生915名(男性634名,女性279名,不明2名,M=19.68歳・SD=1.39)を対象に,研究1同様,対人印象を検討した。その結果,顔形態に関わらず,原型顔に近づくメイクは,人柄の良さ,知性,女性性の印象評価が最も高くなることが明らかになった。また,幼稚的で女性的なメイクは,より若い印象を,男性的なメイクは,より知性的な印象を与えることが明らかになった。メイクの違いによって,異なる印象が生じることが明らかにされ,メイクによって対人印象操作が可能となることが示唆された。

【その後の研究】
 上述の研究は,顔とメイクの指標を作成するという性質上,顔とメイクを構成する要因に制限を設け,2次元のイラストにて検討を行いました。そのため,実際の人物での対応可能性が課題となっていました。その後の研究(九島・上瀬,2017)では,実際に女性の顔を計測し,上述の研究により提示された顔の形態印象モデル(九島・齊藤,2015a,b)に基づき顔を分類できることが確認されました。また,九島・上瀬(2017)へ発達的視点を取り入れた研究も進行中で,今後は,これらの量的確認のため,20代から60代の女性を対象にインターネット調査も行う予定です。

【引用文献】

  1. 九島紀子・上瀬由美子 (2017). 女性の顔形態特徴がメイク行動に与える影響 立正大学心理学研究年報,8,51-62.
  2. 九島紀子・齊藤勇 (2015a). 顔パーツ配置の差異による顔印象の検討 立正大学心理学研究年報,6,35-52.
  3. 九島紀子・齊藤勇 (2015b). 化粧が対人印象に及ぼす影響 応用心理学研究, 41(1),39-55.