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応用心理学事典

日本応用心理学会 編
編集委員長 : 岡村一成(日本応用心理学会理事長)
発行:丸善株式会社
A5判・692頁 上製・函入 本体価格20,000円  ISBN 978-4-621-07807-5


◆ 刊行によせて ◆

 2007年1月 人は人の「こころ」について大きな関心を寄せています。昔から「こころ」とはなにか,「精神」とはなんだろう――――という議論が盛んに行われていました。心理学の歴史をたどると,人間が地球上に現われたときにまでさかのぼってしまうほどです。
 近年,若い人たちの間で,「心理学」が大変ブームになっています。マスコミでも心理学に関したテーマがよく取り上げられています。好奇心の強い若者たちが「こころ」というテーマに深い関心を寄せていることがわかります。しかし,巷にはこころを探索するゲーム感覚の本や,占い的な興味本位のものが多く氾濫し,科学としての心理学に対する誤解を生じさせています。また,一般に心理学というと,カウンセリングなど心理臨床関係の研究や実践と思われるなど,心理学に対する関心に偏りもみられています。
 現代の心理学はその研究領域もきわめて広く,人間行動のあるところすべて心理学の研究分野であるというほど,私たちの生活に密着した学問になっています。そして,心理学の研究は社会の具体的な問題解決に大きな役割を担っているのです。
 我が国の応用心理学的研究活動は1920年頃からすでに芽生え始めておりましたが,心理学の学会は「日本心理学会」に限られていて,いわゆる実験・基礎の研究が中心でした。このような中で,心理学の研究が社会の具体的な問題解決に資することを目指して,広い専門領域の研究者を糾合して1936年に設立されたのが「日本応用心理学会」でした。第二次世界大戦中(1941年~1945年)はその活動を停滞していましたが,戦後1946年(昭和21年)に復興第1回大会が開催され,以来本格的な学会活動が展開されてきました。学会の復興当初は,その組織の中に,教育心理部会・臨床心理部会・産業心理部会・犯罪心理部会・相談部会など多岐にわたる部会を持っていましたが,やがて心理学が多くの分野に分化して発展するようになり,これらの部会はそれぞれ1つの学会として独立していきました。今日,心理学関連の学会はゆうに40を超え,心理学の研究は細分化の傾向を強めつつあります。
 このような状況にあっても,日本応用心理学会は,今もさまざまな領域の会員を擁し,学会の志と長い伝統を大切に実績をあげており,心理学界全体の発展にとってその役割はきわめて大きいものと思われます。
 そこで,日本応用心理学会では設立(復興)60周年を記念して,現代の心理学が多くの分野に分化し,応用され発展してきた内容を,わかりやすく解説し,身近な学問として正しく理解してもらうことを狙いとして,この『応用心理学事典』を企画いたしました。
 ここでは,現代心理学の代表的な応用領域を15分野で精選しました。心理学に興味を持ち,心理学の応用知識を得たい人や,ご自分の専門分野以外で知りたいことのある人が学びやすいように工夫されています。また,中項目主義をとっており,現代の応用心理全般を眺望できる読み物としても活用できるものです。
 この事典は,日本応用心理学会の役員によって各分野の重要な項目が選定され,約240名にわたる会員(一部非会員も含む)の協力を得て執筆されたもので,まさに本学会の英知の結集であります。本事典によって,細分化された現代心理学の諸分野の研究水準が浮き彫りにされ,今後の研究活動に有効な情報を提供することができたことと思います。また,心理学に関心を持つ人々が,心理学に対する偏った知識をなくし,心理学により興味を抱かれ,社会においてさまざまな問題解決に役立つことを期待しております。
 最後になりましたが,日本心理学会諸学会連合加盟学会一覧を掲載するにあたり,ご許可くださいました森正義彦理事長と弘中正美事務局長に厚く御礼申し上げます。
 また,本事典の刊行にあたりご尽力いただいた丸善株式会社出版事業部の小林秀一郎氏と松平彩子さんに,心から感謝とお礼を申し上げる次第です。

2006年12月
日本応用心理学会 理事長
岡村 一成